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『ユーリ!!! on ICE』が怒濤のラブ・ストーリーだった話(中編)


本作の原案の久保ミツロウ先生と山本沙代監督は、男子フィギュアスケートの世界をアニメにしたいという動機が根本的にあって、そこから外国人コーチと日本人選手の話を発想していったということです。最初は、本作のもう1人の中心人物であるユーリ・プリセツキーを主人公にする案もあったそうなのですが、哀しい話になりそうだったので断念し、ヴィクトル・ニキフォロフと勝生勇利を中心に据えたところストーリーが動き始めたとのこと。そして、原作者すら予期していなかったほど2人の結びつきが強いものになってしまったのだそうです。

最終話まで見て、翻ってまた最初から見てみると、1話から5話まででじっくり温められた2人の関係が、6話以降、加速度的にどんどんギアが入り、10話で最高潮に達したかと思いきや、11話の終わりで大問題が発生して……というジェットコースター的展開が、最初っからきっちり組み立てられていたのだということがはっきり分かってきました。

本作はスケート・アニメなのか恋愛アニメなのか?という疑問をネットで見掛けることがあったのですが、これは愚問だと思います。なぜなら、両方あてはまるから。彼らの人生の根底にはいつもスケートが存在していて、愛も生活も総てがスケートと共にあり、人生とスケートが分かちがたく結びついているから、どっちというふうに分けて考えることは意味がないと思うのです。そして、そのくらいスケート漬けの人達でなければ、世界でトップクラスの選手になることなんてできないんじゃないかと思います。
でも、スケートがなければ愛せないの?それはちょっとなんだかなー、ということであれば、彼らはスケートを入口にして愛や人生について学んでいるのだ、ということではどうでしょうか。

主人公の勇利は人見知りで自分に殻を作って閉じこもりがちなキャラクターですが、ヴィクトルとの出会いにより、家族や、ミナコ先生や西郡ファミリーなどに代表されるような地元の友人や支援者やファンなどの、周囲の様々な人達に支えられて今までスケートを続けてこられたことを理解するようになります。(主人公が人見知りという設定を利用して、かなり少人数に集約しているけれど、この辺りの人物配置がものすごく上手いと思います。)また、ライバル達も、戦う相手ではあるけれど氷の上で同じ目標を目指す同志でもあることもヴィクトルから教えられます(5話)。「今までずっと一人っきりで戦っていると思っていた。でもヴィクトルが現れてそれは一変した」(4話)と言うように、彼はこれまでも様々な愛に包まれて生きてきたのだということに気づくことができたのですが、その変化の中心にあったのが、幼い頃から崇拝に近い憧憬を抱き続けてきた大切な人、ヴィクトルとの関係でした。
1話の「僕は一人で滑っていく」が、最終話では「一人で抱えるには大きすぎる夢じゃなきゃ辿り着けない場所がある」に変化するのが、ドラマチックじゃなくて何なのでしょう。

一方、ヴィクトルには、「スケートから離れて頭の中に浮かぶのは2つのL、LifeとLoveだ。20年以上俺がほったらかしにしてること」とつぶやくシーンがあります(10話)。ということは、ヴィクトルは5歳前後からスケート一筋の人生だったんですね。
ヴィクトルの話の内容からすると、普通に何人かの人と付き合ったりはしていたみたいですが、2話の始めにコーチのヤコフに軽くキスして「ゴメンね」と言って別れを告げるシーンや、7話で勇利を泣かせた後に「泣かれるのは苦手なんだ。キスでもすればいいのかい?」と言い放つシーンから類推するに、深入りしたりせず、相手の気持ちに寄り添うこともなく、泣かれるとキスして黙らせて、こじれる前に「ゴメンね」と言ってあっさり別れてしまうような浅い付き合いを繰り返してきたのでは……と想像してしまいます。何せ彼にとって一番大切なのはスケートで、他のことはそれほど重要ではなかったのではないでしょうか。
そんな彼は、あまり長く王座に居続けたことで“もうみんな何をやっても新鮮には驚かない”(3話)状態になってしまったことに行き詰まりを感じており、「いつだって新しい気持ちで滑っていればみんな驚いてくれる。自分の首を絞める枷でもあった。新しい強さは自分で創り出すしかない、ずっとそう思ってた」(11話)と独白しています。
そんな彼に、20年以上ほったらかしにしてきたLifeとLoveをもたらしてくれたのが勇利でした。「勇利の持っているLifeとLoveは、俺が今まで触れたことのない新鮮な世界を教えてくれた」(10話)「今は勇利を通して新しい感情が俺の中に流れ込んでくる」(11話)というヴィクトルの独白……私は泣けて仕方ありません。
ヴィクトルは勇利に「勇利は俺にどの立場でいてほしい?父親的な?兄?友達?じゃあ恋人か(……頑張ってみるか)」(4話)と尋ねますが、勇利は「ヴィクトルはヴィクトルでいてほしい」と答えます。これは非常に重要なセリフかも……と思っていたら、最終話の山場のシーンにも出てきたのでやはり重要なのでしょう。何かの役割を期待するのでなく、あなたがどんな人でも、ただありのままのあなたでいてほしい。ヴィクトルにそう告げた人はもしかしたら今までいなかったのかもしれません。

そんなヴィクトルに愛を捧げるように滑る勇利。その姿をうっとりと眺めるヴィクトルは、まるで恋する乙女みたいです。
スケートを介したヴィクトルと勇利の関係は、単なる恋人とか師弟関係とかを超えた、世界中の他のどんな関係とも似ていない、唯一無二の関係であるように思えます。

そのヴィクトルのセクシャリティを示唆する、気になるエピソードがあります。
2話のヴィクトルは、最初、勇利とミナコ先生の仲を疑っていたみたいで、勇利に「ミナコが好きなのかい?」と尋ね、外出した勇利の行き先が「ミナコさんのとこかアイスキャッスル(スケート場)」と言われて面白くなさそうな顔をします。(この時のヴィクトルの表情がいい!)まぁ、すぐに持ち前の行動力を発揮してミナコ先生の経営するバーに偵察に行き、ミナコ先生はバレエの先生で勇利は熱心な生徒にすぎなかったことが分かるのですが(そしてそのミナコ先生が勇利にフィギュアスケートを勧めたという設定です)、ここで肝心なのは、ミナコ先生は勇利の母親の先輩で、おそらくアラフィフくらいだと思われ、勇利とは文字通り親子ほど歳が離れているということ。でもヴィクトルはそんなことは意に介していないみたいですね。
そもそも最初に勇利に「好きな女の子はいるの?」と尋ねるシーンも、10話を見た後に見るとあれ?と思いました。……もしかしてヴィクトルは、愛の形にこだわらず、どんな愛でも受け入れるタイプの人なんじゃないでしょうか
ヴィクトルは男性しか愛せないタイプには見えないのですが、バイセクシャル両性愛者)というよりは、パンセクシャルとかオムニセクシャルとか呼ばれる全性愛者のような存在であるような気がします。それは、相手の男性らしさや女性らしさに惹かれるのではなく、そもそも性別なんてどうでもよく、その人自身の性格やその人との相性によって恋に落ちるといった性質。そもそもヴィクトルは、世界選手権でもグランプリファイナルでも5連覇を成し遂げているような掛け値なしの天才なので、ちょっと常人と違った性質を持っていても不思議じゃないと思うのです。
ちなみに勇利は、優子ちゃんが初恋の人だったみたいだから(西郡くんと結婚して今や三つ子の母ですが)、普通に女の子を好きになる人だと思われますが、彼にとってのヴィクトルは、小さな頃から優子ちゃんすら凌駕していたほどの特別な存在だったようです。

最初の頃、勇利はヴィクトルのことを「神様がそばにいてくれるようなシュールさ」(4話)なんて表現したりしていますが、この崇拝に近いような感情は最後まで尾を引き、最終話前になって大問題に発展してしまいます。

ということで後編に続きます。

 

『ユーリ!!! on ICE』が怒濤のラブ・ストーリーだった話(後編)


(注:今回は特にネタバレ成分および手前勝手な解釈成分が高いので、嫌な方は読まないで下さいね。)





勇利の様子が時々おかしくなるところはそれまでも度々見受けられたのですが、まさか最終話の直前でヴィクトルに別れを告げるとは……。
別れと言っても、自分は引退するからコーチをやめて現役に戻って下さい、ということなのですが、関係がこじれたまま離れてしまったらもうそれで終わりになってしまうかもしれないじゃないですかー !!

ゆ、勇利さん?ヴィクトルに事前に何の相談もなくいきなりそれはちょっとひどくない?……と思いましたが、それはこちらがヴィクトルの視点も含めた俯瞰的な立場から見ているからそう思うのであって、ヴィクトルの長年のファンでもあった勇利は、ヴィクトルが現役生活を休んで勇利のコーチをしていることに強い負い目があり(「僕のコーチでいることは競技者としてのヴィクトルを少しずつ殺しているのも同然だ」(11話))、いつかはヴィクトルを氷上に返さなければいけないと常々思い悩んでいたんですね。ヴィクトルを神にも等しい存在として崇めていた10年余年のも歳月は、恋人になった短い期間でそんなに簡単に修正できるようなものじゃなかったんですね。そう思うと、4話の「神様、どうか今だけ、ヴィクトルの時間を僕に下さい」というつぶやきが余計切ないですが……。
しかしだからって、「ヴィクトルも泣くんだ……」ってまたひどいことを。ヴィクトルさんを何だと思ってるんですか?あなたの部屋に長年貼ってたポスターじゃないんだからさ。

そんな勇利にヴィクトルは「自分は引退して、俺には競技を続けろだなんてよく言えるよね !? 」と激高しますが……ここからいきなりFS当日になってしまい、「フリーが終わったらそれぞれ自分で答えを出すと決めた」……っていきなり大人の別れ話みたいな結論になっちゃってるしー !! 実はFSの前に公式練習日が1日あったらしいのですが、彼らはこれに姿を現さなかったらしく、まるまる1日分の描写がサラッとすっ飛ばされているのです。そしてFS本番前の二人は完全に破局寸前って雰囲気じゃないですか。えーっ !! 一体何があったのよー !!
でも、滑走直前に交わした会話で二人は何かを理解し合ったらしく、抱き合って泣いている様子なのですが……正直、私はここまでの彼らの心情の流れがちゃんと理解できていなくて、謎だらけで、最終話が終わってからもずーーーっと悩み続けているのです。頼むよーーー公式様!ちょっとでいいから何か教えてくれよーーーーー !!!!!

……私に分かったのは、勇利がヴィクトルに教わったすべてを注ぎ込んだ最高の滑りを見せたということと、その勇利の思いを受け止めたヴィクトルがついに現役復帰を決意したこと、そして、滑っている最中の勇利が、ヴィクトルとずっと一緒にスケートを続けたいという本音を吐露していたことでした。

しかし、勇利に現役復帰を告げたヴィクトルは何とも言えない複雑な表情をしてたんですよね……。この時のヴィクトルは何を思っていたのでしょう……?

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

で、そろそろ、この物語のもう1人の中心人物であるユーリ・プリセツキーにご登場戴かなくてはなりません。

ユーリ・プリセツキーは、ジュニアの世界大会の優勝経験を経てシニアデビュー(大人の大会に出るようになること)目前の15歳のロシア人。ヴィクトルと同じコーチについている後輩です。家庭には恵まれていない様子で、彼に愛を注いでくれた肉親はおじいちゃんだけ。国からの援助を受けており、若いのに一家の大黒柱なので、勝利に対するハングリーさが半端ありません。

ユーリは、勇利に会えば睨みつけて恫喝し、勇利のことを豚・カツ丼・家畜などひどい呼び方で呼び、勇利も最初はユーリに恐れをなしていたのですが、……でも、そもそも最初のシーンで、試合にボロ負けして誰もいないトイレに一人籠もって泣いている勇利のところにどうしてユーリが来ているの?とネットで指摘している人が複数いて……あれ?

そう思って見直してみると、勇利に対するユーリの態度は、好きな子に悪態をつくしかできない、素直じゃない昔の小学生みたいにしか見えなくなってきました。そうしたら最終話で……やっぱりそうか!
そして、勇利の演技を好きなユーリの気持ちが、自分をもっと高めて勇利に勝ち、勇利に認めてもらいたいというモーティベーションに繋がっていたのだと、ほぼ確信するようになりました。

ということで、ユーリの言動を時系列で整理してみました。

1話:勇利のスケーティングに魅かれ、トイレまで追い掛けて行くけれど、メソメソ泣いてる勇利の情けない姿に思わずキレて喝を入れる。その後、バンケットダンスバトル(10話参照)。ダンスする勇利の写真を集められるだけ集めて携帯に大量保存していた。
2~3話:シニアデビューに兄弟子のヴィクトルの力が必要だと考えていたため、日本の勇利の実家にいるヴィクトルを追い掛けてくる。ヴィクトルの気まぐれ?で勇利とスケートで対決することになり、勝ったらヴィクトルを連れ帰る約束をするが、勇利の滑りと、それを見詰めるヴィクトルの様子を見て断念。ロシアに帰り、より強くなって自分の存在を認めさせたいと心に誓う。
4話:リリア先生がコーチに加入。黙々と修業する。
5話:日本国内大会でのヴィク勇の写真を見て携帯をぶん投げ、ミラ(同僚の女子選手)に「妬いてんの~?」とツッコまれる。
6~7話:中国大会のFSでのヴィク勇のキス映像が世界に流出。「ボルシチにしてやる」とキレる。
8話:ロシア大会には勇利もユーリも参加。勇利に対し、勝ってヴィクトルをロシアに残すと宣言(二人を引き離したかったの?)。キスクラでのあまりに親密なヴィク勇にキレて試合前の緊張を忘れる。
9話:ヴィクトル不在で調子の悪い勇利を思わず応援。(ヴィクトルが勇利をロシアに一人残して日本に帰ってしまうエピソードの周到さには唸りました!)試合後も様子のおかしかった勇利をあちこち探し回り、じいちゃん特製の大事なカツ丼ピロシキをプレゼント。この時の珍しく素直なユーリの可愛さったら!
10話:ヴィク勇の婚約を聞きあからさまに動揺。翌朝、海岸に一人佇むヴィクトルに背中から蹴りを入れ、「ヴィクトル・ニキフォロフは死んだ。あんなクソみたいな家畜の世話して何満足げな顔してんだ」「さっさといなくなれジジイ。家畜からもらった指輪はただのガラクタだ。俺が勝って飼い主がいかに無能か証明してみせる」と毒づく。
ここは文字通り、スケーターとしての意欲を失ったかに見えるヴィクトルに対する失望と捉えている人が多いようなのですが、私にはどうしても、勇利をかっさらってしまったヴィクトルへの嫉妬に見えてしまうんですよね……。
11話:SPでヴィクトルの記録を抜く。やったね!その後、キスクラのヴィク勇を蹴っ飛ばし、勇利の隣りに座るサーラ(美人の女子選手)との間にも割って入る。
最終話:勇利が引退するかもしれないことをヴィクトルから告げられ、ヴィクトルに力なくハグされる。(この時ヴィクトルは、ユーリに具体的に何かを告げた訳ではない、と個人的には思っているのですが……。)何かを決意したユーリは、全力の演技で勇利の引退を阻止しようと試みる。「金メダル取れたらやめんのか。ヴィクトルの点超えられたら他はどうでもいいのか。ふざけんな !! 俺をがっかりさせんな !! 豚に食わせる金メダルはねぇっ!」「今引退したら一生後悔させてやるよ。バーーカ!」
演技が終わった時、ユーリは感極まって泣いてしまうのですが、どんな感情が渦巻いていたんでしょうか……。

(……これは完全に個人の妄想レベルの話になってしまうかもしれませんが、私はこのユーリの姿に、少年の恋の終わりを見てしまったんです。)

勇利の滑りを見てヴィクトルが現役復帰を決意するのは予想してたけど、ユーリの滑りを見て勇利が引退を撤回するのは全く予想外でした。

でもここで少し残念に思うのが、時間の関係で、最終話におけるユーリの描写が限られたものになったこと。最終話は、全体的に尺を切り詰めに切り詰めている印象があったのですが、久保先生のお話によると、初回のネームが70Pだったのに対し、最終話のネームは120P(約1.7倍)くらいあったらしく、回想シーンなどを挟めばもう1話作ることが出来るくらいのボリュームがあったようなのです。しかし、テレビアニメの枠組の制約の中ではそんなに簡単に尺を増やしたりできない。そうなると、まずは勇利とヴィクトルの話を中心に描かざるを得ず、その結果、ユーリの描写があおりを受けてしまったのではないかと思われます。実際、本作のスケート曲を集めたサントラにはユーリのエキシビションの曲があるのに、本編には登場しませんでしたよね。

10話のラストにびっくりするようなエピソードが出てきて、これまで信じられてきた勇利とヴィクトルの関係が反転してしまい、もう1度1話から見直さざるを得なくなってしまったように、最終話でユーリが最初から勇利の滑りに魅かれていたことが明らかになったことで、ユーリと勇利の関係も反転し、更にもう1度1話から見直してみたくなってしまう、という驚くほどに周到な仕掛けと伏線が張り巡らされたシナリオだったことに気づいた時、私は身震いしてしまいました。
だからこそ、最終話でユーリの心情をもっとじっくり描くことができていれば、勇利の引退をユーリが最後に覆したというクライマックスと相まって、この話が二人のユーリとヴィクトルの三重奏の物語としてもっと完成されたものになっていたのではないかと思われ、それが完全には果たせなかったと見受けられるところが、少しだけ残念に感じられるのです。

もちろん、これは監督の手腕等々の問題などではなく、完全に時間的制約の問題です。むしろこれだけ中身の詰まった最終話をよくここまでまとめ上げて下さったものだと、山本沙代監督を始めとするスタッフの皆様には心からの感嘆と感謝と畏敬の念しかありません。

それでも、やっぱり最終話に今一つ食い足りなさを感じているのも事実なんですよね~。だから、2期があるなら見たいけどその前に、10話あたりから最終話までのグランプリファイナルの完全版を映画か何かにしてもらえないものだろうかと、切に願ってやみません。あのFS前の空白の1日や、ユーリの心情や、試合後の表彰式からエキシビションに至るまでの諸々のエピソードなどをもう少しじっくり描いて欲しいし、我儘を言えば、エキシビションだって、本当はもっとたっぷり見たかったんです……!

と勝手な願望を書き散らしておいて、やっと話も尽きてきたのでそろそろ本編を終わりにしたいと思います。この作品に携わって下さったすべてのスタッフの皆様と声優の皆様、この作品を全力でこの世に送り出して下さって本当にどうもありがとうございました!

最後まで読んで下さった方がもしいたら。こんな駄文に長々とお付き合い戴き本当にどうもすみません。少しは気が済んだような気がします。どうもありがとうございました。

 

『ユーリ!!! on ICE』で好きなキャラ


『ユーリ!!! on ICE』には中心となる3人の人物以外にも魅力的なキャラクターがたくさん出てきますが、その中でも自分が特に好きなキャラクターのことをちょっとだけ書かせて下さい。

まずはみんな大好きなピチット・チュラノン君。嫌な人物というのがほぼ登場しない『ユーリ…』の中でも屈指の本当にいい子。単にいい子なだけじゃなく、人一倍闘争心も高くて、志も高い。ピチット君を見ているだけで心が洗われる~。で、こんなにいい子が親友だと言ってくれているなんて、勇利くん自身もどれだけいい子なんだと思わずにはいられません。
想像してみるに、10代の半ばから本国のタイを離れ単身で外国に修業に来ていたピチット君だって、しんどいことも、寂しくなる時も、たくさんあったんじゃないかと思うんです。でもそんな時、勇利はごく自然に親切に接してくれていたんじゃないかと思うんですよね。
10話の例のシーンでピチット君が即座に状況を理解したのは、デトロイト時代もその後も勇利と頻繁にやりとりをしたりその動向をチェックしていたりして、勇利が今どんな状況にあってどんなことを考えているのかよく知っていたからなんじゃないかなと思います。

次にリリア・バラノフスカヤ先生。元ボリショイ・バレエのプリマで、ロシア・チームのコーチのヤコフが呼んだユーリ専属のコーチ(ヤコフの元妻)。実際、バレエの出身者がフィギュアスケートに関する仕事に携わることはままあることなのだそう。
リリア先生は、フィギュアスケートが単なるスポーツ競技であることを超え、美的要素や芸術的要素も併せ持つ競技であることを端的に体現している人物だと思います。そしてその演技の根底には愛が必要なことを誰よりも理解している人物でもあります。
「過去の自分は死にました!何度でも生まれ変われる人間が強いのです!」(4話)「美しさは圧倒的な正しさ。強くても美しくなければ意味がないわ。」(9話)「(ユーリは)沢山の出会いの中、愛の入口を感じたのではないかと思います。」(11話)名言ですな。

そして『ユーリ…』の全キャラの中で個人的に誰よりも興味深いのがクリストフ・ジャコメッティ。かつてヴィクトルがクリスに投げたピンクのチューリップの花言葉は「愛の芽生え」。クリスの携帯の待ち受けもヴィクトルとのツーショット。クリスは絶対にヴィクトルを愛してるよね。でもクリスには現実の恋人はおそらく別にいて、ヴィクトルとの関係は氷の上でしか成就しない。だからこそヴィクトルを氷の上に連れ戻したいと誰よりも願っている。
ヴィクトルの長年のライバルという、誰にも真似できない唯一無二の座を、努力を重ね時間を掛けて勝ち取ったクリスの愛は相当にこじれまくっていると思います。そして勇利には不思議なほど優しいんですよね。むしろヴィクトルが愛しているものはオレも愛している、くらいに達観しているような。そんなクリスが好きでたまりません。しかし、“色気の破壊兵器”と言われるクリスに、私は逆にあんまりエロスを感じないんですけどね……なんでだろう。

 

2016年の個人的ベスト20映画

 

2016年の個人的ベスト映画です。

 

1.【シン・ゴジラ
2.【この世界の片隅に
3.【リップヴァンウィンクルの花嫁】
4.【葛城事件】
5.【ひそひそ星】
6.【永い言い訳
7.【怒り】
8.【日本で一番悪い奴ら】
9.【オーバー・フェンス】
10.【後妻業の女】
11.【サウルの息子
12.【最愛の子】
13.【リリーのすべて
14.【キャロル】
15.【マネーモンスター
16.【ルーム】
17.【スポットライト 世紀のスクープ
18.【グッバイ、サマー】
19.【十字架】
20.【モヒカン故郷に帰る
20.【湯を沸かすほどの熱い愛】

 

(ドキュメンタリー金賞)
バンクシー・ダズ・ニューヨーク】【シチズンフォー スノーデンの暴露】【シリア・モナムール】

(ドキュメンタリー銀賞)
【牡蠣工場】【台湾新電影(ニューシネマ)時代】【カルテル・ランド】【奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ】

(ドキュメンタリー銅賞)
【お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました】【園子温という生きもの】【いしぶみ】【カレーライスを一から作る】【フランコフォニア ルーヴルの記憶】

(ドキュメンタリー音楽賞)
【ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン】【ザ・ビートルズ Eight Days A Week The Touring Years】

 

書いてみてから気づきましたが、1位から10位まで全部日本映画でした。ありゃ凄い。
シン・ゴジラ】は昨今の実写映画としては驚異的な数字を売り上げ、昨年前半にはあんなに話題を振りまいたのに、後半に出てきた【君の名は。】や【この世界の片隅に】すっかりスポットライトを持って行かれてしまい、あんまりにも不憫だったので敢えて1位にしてみました。異論は受け付けませんので(笑)、ご自分のチャートを作ってご自分の希望を反映させてみて下さい。

 

よろしければこちらの元ページもどうぞ。

 

2017/01/11追記:

こーんな不穏な記事を見掛けたのでいやーんと思って。
2つくらい前の記事に書きましたが、私は【この世界の片隅に】も【君の名は。】も両方いい映画だと思ってる派です。この記事には書き切れませんでしたが、【君の名は。】も、去年180本くらい見た中で30位以内くらいには入ると思うの。ただ、自分の中でそれ以上の評価にならないのは、あの映画の瑞々しさを正確に受け取る回路を持っていないというこちらの問題なのであって、映画のせいではありません。

 

2017/01/17再追記:

大昔に書いたっきりの話を一つ思いだしたので追記しておく。
そもそも、なんたら雑誌賞やらなんたらバカデミー大賞やらに信頼を置きすぎというか、権威か何かとして崇め奉りすぎなんじゃないのかな。
このブログの記事自体そうだけど、どこかの誰かの評価なんてすべて参考にしかならないものだし、自分にとってその映画がいい映画かどうかは、結局、自分の目で確かめてみなければ何にも分からないでしょ。

 

最近見た映画 (2016/12/31版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

ニーゼと光のアトリエ
ブラジルの実在の女性精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラをモデルにした物語。芸術療法や動物療法も今でこそ当たり前だけど、女性の地位が今より全然低く、患者の扱いもひどかった半世紀以上も前に行うのはさぞや苦難の連続だっただろう。

 

14の夜
ある14歳男子のいろいろなことがありすぎた一夜。煩悩と怒りと訳の分からない衝動で鬱屈する男子中学生って、こればかりは女性作家には逆立ちしても描けない世界。主演の犬飼直紀くんのナイーブさが素晴らしい。

 

こころに剣士を
監督はフィンランド人、舞台はエストニアの合作映画で、スターリン政権下で秘密警察に追われながら子供達にフェンシングを教えた実在の指導者を描く。このフェンシングクラブは今でも続いているんだそうな。

 

幸せなひとりぼっち
偏屈で変わり者で一人で生きることに疲れたじいさんが、近所に越してきた一家との交流をきっかけに、自分の人生を照らしてきた妻との記憶を今一度思い起こす。スウェーデン映画には人間観察が緻密な秀作が多いと改めて思った。

 

アズミ・ハルコは行方不明
アラサーと二十歳と女子高生でもう“三世代”としてカウントするんだってさ、わーい。その細かい区分がババアにはもうよく分からない。でも人生楽しくなるのは三十からだぜ。みんな頑張ってね。

 

ヒッチコック/トリュフォー
ヒッチコックトリュフォーの『映画術』は大~昔に読んだのだが、このインタビューの音源が残っているとは知らなかった。そして、この本を読んで、自分は映画を作る方にはからっきし興味がないのだと悟ったことも思い出したな(笑)。

 

グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状
ウィーン美術史美術館の大規模改装を機に製作されたドキュメンタリー。ヨーロッパの大美術館のドキュメンタリーは取り立てて珍しくないほどたくさんあるけど、どこでも美術に身を捧げた人々が真摯に働いているのが心に残る。

 

風に濡れた女
主演のお二人によると、これは獣が交わる話なんだそうで……成程。ごめんなさい、私、今ちょっと他のことで頭がいっぱいで、男性の描くエロスなんて単純すぎてつまんないと思ってしまったかも。でも主演の永岡佑さんはカッコいいですね。

 

聖杯たちの騎士
薄っぺらい享楽的生活を送るハリウッドセレブの脚本家と6人の美しい女性達。LoveとLifeを20年間ほったらかしにしてきた某リビングレジェンドの女性遍歴もちょっとこんなだったかも、ということにしか興味が湧かなくてすいません……(もっとも、レジェンドはもっと本業一筋だったと思うけど)。

 

海賊とよばれた男
出光の創業者をモデルにした話なんだそうで、日本のエネルギー政策にさほど興味がない人にはそれほど面白くないかもしれない。ていうか、私、この原作者が大っ嫌いでして。山崎貴監督、いつまでこの人の原作で撮るおつもりなんですかね……。

 

 

えーと、今回はいつもにも増してアホな感想でごめんなさい……。年内の更新はこれで最後です。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。

 

(前回の続き)アニメがいっぱいな話。

 

前回の記事に少しだけ書いた【この世界の片隅に】ですが、口コミでじわじわと観客動員数を伸ばしてきているそうですね。館数拡大・ロングランの様相を呈してきたようで、喜ばしい限りです。

 

既にご存じの方も多いかと思いますが、【この世界の片隅に】は、戦争が時代背景になってはいるけれど、あくまでも主人公のすずさんの日常の生活を淡々と描いている作品です。そうは言っても、実際は大変エグいことも次々起こっていて、後からよくよく考えるとじんわり刺さってくるのですが、例えば【火垂るの墓】みたいな脳天をかち割られるような激しい衝撃を受けることは少なく、観終わった後はほっこりと暖かく、拍子抜けするほどの穏やかな印象が残ります。これは、登場人物の人達が、その奥ゆかしく柔らかくも強靱な意志により、辛い時代の中でもあくまでも普通の暮らしを貫こうとしていた姿が描かれているからではないかと思いました。(ただ、【火垂るの墓】みたいな作品があればこそ、本作のような作品も成立しうるのかもしれないとも思いましたが。)
また別の側面として、本作は、知らない家にお嫁に来たある少女が、様々な経験を経て酸いも甘いも知った一人の女性に成長する中で、自分の居場所って何だろうと考え続け、“この世界の片隅に”居場所を見つける物語でもあるように思いました。
そんなすずさんの成長を声で演じている能年玲奈さん(本名)。本当に素晴らしい。やはり彼女の才能は、同年代の数々の女優さんの中でも頭ひとつ抜けているのではないかと思いました。

 

君の名は。】が興収で邦画の歴代2位まで上がってきたそうで、また【映画 聲の形】も未だに動員を伸ばしているそうですね。昨年には【バケモノの子】の大ヒットもありました。宮崎駿監督が新作に意欲を示していることが伝えられ、そうなったらそうなったで大変嬉しいことではあるのですが、もしそうならなかったとしても日本のアニメーション界はやっていけるのかもしれない、という確信がもたらされつつあるのが凄いと思います。

 

あ、そう言えば一つ思い出したことが。
たまに、【この世界の片隅に】を誉めようとしてうっかり【君の名は。】などをディスっている人を見かけるのですが、意味ないんじゃないでしょうかね。タイプの違う作品だし、どちらの作品も素晴らしいので、それでいいじゃないですか。
ただ、【君の名は。】がどうしてここまでヒットしているのかな~とつらつら考えていて、自分自身は、ボーイ・ミーツ・ガールとか運命的な恋とかいったモチーフにも、RADWIMPSの音楽にも、若い人達みたいには反応しきれていないかもしれないな~ということに思い至りました。つまり、皆様の周りにもし【君の名は。】への反応が鈍い人がいたとしたら、その人はきっと、私みたいに、人生にもう大して憧れやときめきが残っていないジジババなんですよ。だから、可哀想だと思って生温かい目で見てスルーしてやって下さいね。

 

しかし、これだけいろいろ書いといて本当になんなんですが、実は今、私の頭の中は『ユーリ!!! on ICE』でいっぱいだったりします……。ここまで来て、今年の大本命はこれだったか~ !! というね。もうね。ズブズブズブズブ……。ちなみに【この世界の片隅に】と同じMAPPAという会社の制作です。MAPPAすげ~~~。

 

『ユーリ!!! on ICE』についてはまた機会がありましたら。

 

(2016/12/08追記)
第10滑走をリアルタイムで見た!
今まで、BLに寄せすぎたら視聴者を限定してしまいすぎるんじゃないのかな~、とか心密かに思っていたこととかが全部いっぺんに馬鹿らしくなった。
Love conquers all. 他のことはくだらない。本当にもう全部くだらない。
世界中のあらゆる形の総ての愛を全力で祝福します!

 

最近見た映画 (2016/12/05版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

この世界の片隅に
今年ナンバーワンの呼び声も高い。特に異論は無い。

 

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気
同性のパートナーに遺族年金を残そうとして戦ったカップルの実話の映画化。性的マイノリティの権利獲得という側面も無視できないけれど、死という別れを前にした二人が愛を完遂する物語でもあるところに、涙せざるを得なかった。

 

ぼくのおじさん
ぼんくらで屁理屈ばっかりで生産性ゼロの、自称哲学者のおじさん。それでも見ていて嫌にならずにほんわか楽しくなってしまうのは人徳なのかな。トボけた味の松田龍平さんとしっかりものの大西利空くんの組み合わせがナイス。

 

カレーライスを一から作る
グレートジャーニー・関野吉晴氏の大学の授業をドキュメンタリー化。命を育むのは大変だということ、私達はその命を戴いて生きていることを再認識。そうしたことを、時間を掛けて少しずつ体感していく学生達の姿自体も面白い。

 

聖の青春
持病のため29歳で早逝した村山聖棋士を描いたノンフィクションを映画化。一日でも長く指したいならもっと節制を…と思わないじゃなかったが、自分の寿命を分かっていればこそ自分を燃やし尽くしたかったのかもしれない、と思い直した。

 

エヴォリューション
女性達が美少年達を監禁して怪しい手術を施す島って、男女逆だったら発禁レベルでは……。好き嫌いははっきり分かれると思うが、この独創性は他に類を見ない。壮絶なまでに美しい海中の景色がまたおどろおどろしい。

 

ジュリエッタ
不幸な誤解や偶然が重なった結果、子供と行き違って失踪までされてしまうなんて、親から見たら完全にホラー映画かもしれない。あからさまな悪意で場をかき乱す、アルモドバル作品ではお馴染みのロッシ・デ・パルマ先生がコワい。

 

オケ老人!
間違ってご高齢者ばかりの激ヘタ楽団に入ってしまった主人公を杏さんが演じるコメディ。いくつかの伏線もきれいに回収されててとてもウェルメイドだったけど、途中でいきなり上手くなってしまうところだけちょっと気になったかな。

 

ブルゴーニュで会いましょう
ブルゴーニュの家族経営のワイナリーって、それだけで心ときめく舞台設定だわね~。お話は少々都合よく進み過ぎな気もするけれど、ブルゴーニュのワイン造りの雰囲気が味わえるのは素敵。隣家の名醸造家のマダムがかっこいい。

 

ミュージアム
小栗旬さんが仕事仕事で家庭が崩壊している旦那の役というのは新しいと思ったが、猟奇殺人もの自体には食傷気味かも。どの作品でもショックを与えることばかりが大事で、結局、殺人の動機を後付けするのに四苦八苦している印象がある。

 

溺れるナイフ
十代特有の十全感とそのほころび。きっとあとしばらくしたら取るに足らないことになるんだろうけれど。細かく見たらいろいろ欠点もあると思うけど、菅田将暉さんや小松菜奈さんの瑞々しさをこれだけ描けていればいいような気がする。

 

五日物語 3つの王国と3人の女
17世紀に書かれたイタリアの寓話を【ゴモラ】のマッテオ・ガローネ監督が映画化。人間の果て無き欲望とその対価、がテーマかな?ちょっと取っつきにくいけど、グロテスクでダークなイメージはちょっとテリー・ギリアム監督作品みたい。

 

ジムノペディに乱れる
会う女会う女、みんな股広げて寄ってくるとか、さすがはロマンポルノ、男の夢が満載だ!でも、板尾創路さんからうらぶれた男の色気をここまで引き出してみせた行定勲監督は、やっぱりちょっと凄いかもしれない。

 

雨にゆれる女
過去の悔恨に現在が侵食され引き摺られていく。下手すると煮ても焼いても食えない自己陶酔型ハードボイルドになりかねないところを、青木崇高さんが血肉化させていいバランスで成立させていたのでほっとした。

 

この世界の片隅に】の感想はまた後日アップさせて戴ければと思います。

 

今回は他にこのような映画も見ました。

誰のせいでもない】はヴィム・ヴェンダース監督の新作ですが、理由はどうでも、煮詰まる作家の話というのはちょっとお腹いっぱいかもしれません……。

湾生回家】は、戦前に台湾で生まれ育ち終戦時に引き揚げてきた「湾生」の人達を追ったドキュメンタリー。多くの人が今でも台湾に強い郷愁の念を抱いているということを知り、日本と台湾の独特な結びつきの礎はこのようなところにもあるのかと思いました。

疾風ロンド】はヒドいですね~。何万人も殺せるような炭疽菌が流出、なんて事態になったら、普通の感性を持ってる科学者なら、自分達だけでなんとかしようとせずに真っ先に警察に駆け込むとかするんじゃないすかね。阿部寛さんの出演作でここまでハズしたと感じたものは今まで無かったんですけどね……。