たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2017/05/03版)

 

ここ2ヵ月でこんな映画を見ました。

 

彼らが本気で編むときは、
私の好きなものばかりたくさん詰まった映画。リンコさんとマキオくんのカップル最強!周りの人物の描き方も丁寧。そして、ち○こを108個編んで供養するという発想がぶっ飛んでいて素晴らしい。

 

わたしは、ダニエル・ブレイク
費用を効率的に使うためであるはずのシステム化が人間性を蹂躙し追い詰める。これはきっと現代のどこの社会にもある話。最後の巨匠ケン・ローチ先生、どうかどうか、まだまだ頑張って戴きたい……。

 

午後8時の訪問者
そうやってあまりに非人間化された社会の中、人間性を取り戻そうとする試みが一方で地味に始まりつつあるのではないかと思うこともある。良心という一見陳腐に思える概念がその鍵となる。

 

バンコクナイツ
タイの歓楽街の映画と聞いてもピンとこなかったけど、日本社会とこんなにダイレクトに繋がっているんだな。そして何よりも、あまりに映画的としか言いようのないこのダイナミックさと豊穣さに驚かされた。

 

ヨーヨー・マと旅するシルクロード
ヨーヨー・マさんが音楽で世界と戦っているように、美しいものや楽しいものや可愛いものや光り輝くもので世界と戦いたいと思う。昔アルバムを買ったガイタ吹きのクリスティーナ・パト姐さんが超カッコイイおばさんになっていて痺れた。

 

娘よ
パキスタンイスラム部族の村で幼い娘が結婚させられそうになり母親と逃げる話。普通あそこで親切なトラック運転手は通り掛からないと思うが、実際逃げるということはそれだけ至難の業なんだろうなぁ……。

 

夜は短し歩けよ乙女
この圧倒的なイマジネーション!湯浅政明監督は控えめに言って天才!原作は5ページで挫折したが、このような形で映像化してもらえると咀嚼することができてありがたかった。

 

タレンタイム 優しい歌
マレーシアの巨匠ヤスミン・アフマド監督の遺作。暴力と不寛容の時代に、ユーモアを持って生きる方法を説く。本当につよくてやさしい人じゃなきゃこういう映画は創れないと思う。

 

お嬢さん
スレた人間ばかりが出てくる心寒い化かし合いの話かと思っていたら、とんだロマンティック純愛ストーリー(女性同士)だった。ヘンな日本語でもオッケーイ。今の日本にこの役が演じられる若い美人の女優さんはほとんどおらん。

 

チア☆ダン
そんな今の日本でイチオシの若手女優トップ2がご出演。内容的には【スウィングガールズ】のn番煎じのような気もするが、わざわざ実話を探してきてこれだけ丁寧に作られていたら文句は言えねぇ。

 

サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ
人々の生活の中から立ち上がってくるフラメンコの生々しさがとても好み。個人的にはカルロス・サウラ監督の【フラメンコ】に次ぐフラメンコ・ドキュメンタリーの名作だと思う。

 

ムーンライト
ゲイの少年がアイデンティティを求めて彷徨う。これまで描かれ難かったアメリカ社会の様々な様相を映し取る本作がアカデミー賞の作品賞になったところに、アメリカの内面的な変質を感じた。

 

未来よ こんにちは
夫に離縁され、認知症の母に先立たれ、仕事も絶不調で、孤独まっしぐらの中高年のヒロイン。まったくもって他人事じゃないこの寄る辺なさも、お友達にして生きていくしかないんだよねぇ。

 

はじまりへの旅
ちょっと変わったパパと森の奥で暮らす6人の個性的な子供達。こんな役があまりにもピッタリなヴィゴ・モーテンセン様。こんな人達もいるのかも?と思わせるところも、またアメリカの懐の深さ。

 

人生タクシー
イラン政府から映画製作を禁止されているジャファル・パナヒ監督。今回は“車載カメラがたまたま撮った映像”としてタクシー運転手を主人公にした本編を制作。映画への飽くなき執念が凄すぎる。

 

モアナと伝説の海
そもそもハリウッド映画は世界中の文化を食い散らかしているので、ディズニーがポリネシア文化を食い物にしているという批判は今更。本作を見てポリネシア文化を理解した気にさえならなければいいんじゃないの?

 

しゃぼん玉
一歩間違えるととんでもなく陳腐になりそうなストーリーだけど、市原悦子さんや綿引勝彦さんの演技の安定感が半端なく、安心して見ていられた。それに私、林遣都くんが出てるとどうも見ちゃうという癖が……。

 

メットガラ ドレスをまとった美術館
服飾の歴史を美術史に組み込むのはいいとして、資金集めのためとはいえ年一回ハリウッドセレブを招いてどんちゃん騒ぎするのをシステム化する必要があるのか。良くも悪くもアメリカ文化の縮図だなーと感じる。

 

汚れたミルク あるセールスマンの告発
グローバル企業の不正を告発しようとした個人が受ける妨害、という英雄物語に留まらない様々な位相を見せる本編は、現代社会のままならなさそのものを表現しているのかもしれない。

 

ひるね姫 知らないワタシの物語
夢の世界と現実世界のリンクが分かりにくいというか、ちょっとご都合主義的では?あと、元岡山県人としては、他県人の話す岡山弁がどうしても不自然に聞こえてしまうのは致し方あるまい。

 

 

3月からこの方、自分史上かつて無いほど仕事が忙しい日々が続き、法事が重なり、その間にイベントがあり……もともと虚弱な私めは、ちょっと疲れました。例年より見ている本数も全然少なく、もう終わってしまっている映画ばかりですが、自分の備忘録として挙げておきます。

 

最近見た映画 (2017/02/25版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

沈黙 サイレンス
個人的にはマーティン・スコセッシ監督の最高傑作なんじゃないかと思う。もしかしたらこのまま今年No.1になってしまうかもしれない。

 

サバイバルファミリー
おそらく、先の震災時に停電で右往左往したひ弱な都会の人間(私も含め)がモデルだけど、電気がなくなったらどうなるかというのは非常に重要な思考実験だろうとは思う。ついでに家族の絆を再構築する話でもある。

 

牝猫たち
デリヘルで働く三者三様の女性達。ふわふわと実態のない今の社会のある側面が彼女達に投影されている、と思って見ると興味深い。個人的には今回の日活ロマンポルノのリブート企画の中で一番面白かった。

 

未来を花束にして
イギリスの女性参政権運動を描いた物語。女に政治を考える能力はな~い !! という有形無形の様々な攻撃にどっと疲れる。何故か【マルコムX】を思い出し、権利獲得の歴史とは戦いの歴史である、としみじみ反芻した。

 

ショコラ 君がいて、僕がいる
20世紀初頭のフランスで、差別や偏見に翻弄され時代の波に消えていった天才黒人芸人ショコラ。白人の相方との一筋縄ではいかない関係が切なかった。

 

恋妻家宮本
妻への愛を再確認する中年男。遊川和彦先生はもしかして、原作などの縛りがあった方が突飛な方向に走りすぎなくていいのではあるまいか。

 

海は燃えている イタリア最南端の小さな島
アフリカや中東からの難民の波に晒される島の人々の静かな生活。思うところのあった皆様には【海と大陸】や【13歳の夏に僕は生まれた】などをお勧めしてみる。

 

ANTIPORNO
何かを語り出す前にイメージ映像の羅列で終わってしまった印象。園子温監督、これなら引き受けない方がよかったのでは? でも昨今“平凡な中年女性のエロス”市場を一手に引き受けている筒井真理子先生だけでも見る価値はあるかもしれない。

 

たかが世界の終わり
家族内に軋轢があったりするなんてよくある話よねー、という私なら1分で終わってしまう話を100分に引き伸ばすのがグザヴィエ・ドラン・クオリティ。でもこれまでの同監督作の中では本作が一番好きだったかな。

 

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
愛が醒めていた妻を事故でいきなり失った男の逡巡に寄り添う。地味と言えば地味。この男がジェイク・ギレンホールさんでなければ成立しなかったかもしれない。

 

ゾウを撫でる
映画を作る様々な人々を丁寧に描いた群像劇。もう少し強めのキャラやエピソードを核にした方が遡及しやすかったのでは?と思うけど、佐々部清監督は敢えてそういうのではない方向性で描きたかったのかな?とも思う。

 

 

今回はこの他に、【人魚姫】(チャウ・シンチー監督)【なりゆきな魂、】【島々清しゃ(しまじまかいしゃ)】などの作品も見ました。【愚行録】や【ホワイトリリー】はイマイチだったかな。
今回は家族が一瞬入院してしまったりして、思った以上に更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。それにしても。今年は見る本数がぐっと減りそうだという予感はありましたが、思った以上かもしれません。

 

ところで、清水富美加さんのことが少し騒がれていますね。伝えられている情報から想像するに、彼女を広告塔にしたかった宗教団体側と、彼女がいた芸能事務所側の思惑が一致せず、双方であることないことをぶつけ合っている状態に見えるのですが、どうなのでしょう。
私はこの件に関して言いたいことが1つだけありました。私は、彼女が朝ドラの後に出演していたテレビ東京『SICKS』というドラマの、マユきち先生役が大好きでした。この役を演じる彼女を見て、この人はなんて感受性に溢れていてなんて才能があるんだろう、と感動に近いものを覚えたことが忘れられません。だから、彼女がかつて携わったいくつかの仕事に関してネガティブな発言をしているのを聞き及び、もし彼女がこのドラマの仕事のこともあまり好きではなかったとしたら、それはとても悲しいかもしれない、と思いました。
芸能界という特殊な世界にいれば、本当に吐き気がするような嫌な仕事だって少なかならずあるのかもしれない、ということは想像に難くありません、が、それを口に出すのはよくよく考えてからにしてもらえないものでしょうか。芸能界は夢を売るのが仕事だし、かつてそこに携わることになった過程には自分自身の意志が少なからず介在していたはずですから。だからと言って総てをただ黙って我慢しろと言っているのではありませんけれども。

 

鈴木清順監督のご冥福をお祈り申し上げます。宮崎駿監督、新作お待ち申し上げております。YOI熱は続行中。毎度とりとめがなくてすみません。

 

映画【ゴンドラ】の思い出

 

伊藤智生監督の【ゴンドラ】という映画のリバイバル上映があり、大昔にテアトル新宿で観て以来、ほぼ30年ぶりくらいに拝見させて戴きました。

伊藤監督は、このたび30年ぶりに二作目の劇場用長編を撮ることを決意し、その決意をより確かなものにするために本作のデジタルリマスター版を作成したそうです。そして、2/11から2/24までの2週間、ポレポレ東中野で、このリマスター版の上映が行われるそうです。

私が見たのは、それに先だって行われたユーロスペースでの35ミリフィルムの上映でした。このフィルム版は、経年劣化はあっても、まだ何とか上映可能な状態だったとのこと。そして今や、35ミリフィルムを上映できる映画館は都内でも数えるほどしかない、と聞くと、やはり歳月の流れを感じてしまいますね……。

 

 

私が【ゴンドラ】に思い入れがあるのは、この映画がかつて、【戦場のメリークリスマス】、【ゴダールのマリア】、パトリック・ボカノウスキー監督の【天使】などともに、自分を映画という底なし沼に引き摺り込んだ映画のうちの1本だったからです。

海外との合作映画だった【戦メリ】などは別にして、それまでの日本映画は、泥臭いとか暗いとか、はたまた過度にミーハーであんまり中身がないとか、そういうダサいイメージでした。(当時の自分はまだ、角川映画なんかを穏当に評価できるほど、こなれていなかったし。)そういった固定概念を完全に覆して、日本映画にも観るべき作品はあるからちゃんと向き合わなければならないのだ、ということを決意させてくれたのがこの映画でした。

 

 

でも実際に再見してみて唖然としました。というのも、内容をほぼ忘れてしまっていたからです!

主人公の少女のちょっと衝撃的な登場シーンもそうですが、もう一人の主人公というべき青年の存在がすっぽり抜け落ちていたのにはかなり驚きました。そして、青年を忘れていたということは、清掃用のゴンドラに乗ってビルの窓を拭いている青年の登場のシーンも、その後のストーリーもほぼ忘れていたということで、少女が死なせてしまった小鳥の埋葬場所を探すくだりも、青年の故郷の寂れた漁村も、あまりに美しい海の色も忘れていたということで、


覚えていたのは、

少女がどこだか分からない線路の上を一人歩いているところと、

熱を出した少女のかすむ意識の端に口論する両親がおぼろげに映るところと、

二人が乗った小舟が夕焼けの海に逆光で浮かび上がるところの、

3つのシーンだけでした。


そう、まばゆい黄金色の海に浮かんだ小舟はまるでゴンドラみたいだった。あれが映画のラストシーンだった。


不思議なもので、観ているうちに、忘れていたはずのいくつものシーンも記憶のどこかに刻みつけられており、確かに以前観たことがあったと思い出されてきたのです。

そういえば当時、青年が微妙な年頃の少女を連れ回すなんて話がちょっと危うく感じられて(実際は少女が青年につきまとっていたのですが)、途中まで少しハラハラしながら見ていたことも思い出しました。でも結局は、世知辛い世相に毒されている自分を見つけて、少し哀しく感じただけでした。この二人はただ、歪みのない魂のありかを求めて、きょうだいみたいに寄り添って彷徨っていただけだったからです。

 

 

実は、映画を再見する前は、もしかしてこの映画が記憶の中だけで過度に美化されているんだったらどうしようって、少々おっかなびっくりでした。でもそんな心配は杞憂に終わり、この映画が長年思い続けてきた以上に素晴らしい映画だったことに安堵し、感謝したい気持ちになりました。

もし機会がありましたら、皆様も是非一度ご覧になってみて戴けると嬉しいです。

 

2016年の個人的ベスト20映画

 

2016年の個人的ベスト映画です。

 

1.【シン・ゴジラ
2.【この世界の片隅に
3.【リップヴァンウィンクルの花嫁】
4.【葛城事件】
5.【ひそひそ星】
6.【永い言い訳
7.【怒り】
8.【日本で一番悪い奴ら】
9.【オーバー・フェンス】
10.【後妻業の女】
11.【サウルの息子
12.【最愛の子】
13.【リリーのすべて
14.【キャロル】
15.【マネーモンスター
16.【ルーム】
17.【スポットライト 世紀のスクープ
18.【グッバイ、サマー】
19.【十字架】
20.【モヒカン故郷に帰る
20.【湯を沸かすほどの熱い愛】

 

(ドキュメンタリー金賞)
バンクシー・ダズ・ニューヨーク】【シチズンフォー スノーデンの暴露】【シリア・モナムール】

(ドキュメンタリー銀賞)
【牡蠣工場】【台湾新電影(ニューシネマ)時代】【カルテル・ランド】【奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ】

(ドキュメンタリー銅賞)
【お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました】【園子温という生きもの】【いしぶみ】【カレーライスを一から作る】【フランコフォニア ルーヴルの記憶】

(ドキュメンタリー音楽賞)
【ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン】【ザ・ビートルズ Eight Days A Week The Touring Years】

 

書いてみてから気づきましたが、1位から10位まで全部日本映画でした。ありゃ凄い。
シン・ゴジラ】は昨今の実写映画としては驚異的な数字を売り上げ、昨年前半にはあんなに話題を振りまいたのに、後半に出てきた【君の名は。】や【この世界の片隅に】すっかりスポットライトを持って行かれてしまい、あんまりにも不憫だったので敢えて1位にしてみました。異論は受け付けませんので(笑)、ご自分のチャートを作ってご自分の希望を反映させてみて下さい。

 

よろしければこちらの元ページもどうぞ。

 

2017/01/11追記:

こーんな不穏な記事を見掛けたのでいやーんと思って。
2つくらい前の記事に書きましたが、私は【この世界の片隅に】も【君の名は。】も両方いい映画だと思ってる派です。この記事には書き切れませんでしたが、【君の名は。】も、去年180本くらい見た中で30位以内くらいには入ると思うの。ただ、自分の中でそれ以上の評価にならないのは、あの映画の瑞々しさを正確に受け取る回路を持っていないというこちらの問題なのであって、映画のせいではありません。

 

2017/01/17再追記:

大昔に書いたっきりの話を一つ思いだしたので追記しておく。
そもそも、なんたら雑誌賞やらなんたらバカデミー大賞やらに信頼を置きすぎというか、権威か何かとして崇め奉りすぎなんじゃないのかな。
このブログの記事自体そうだけど、どこかの誰かの評価なんてすべて参考にしかならないものだし、自分にとってその映画がいい映画かどうかは、結局、自分の目で確かめてみなければ何にも分からないでしょ。

 

最近見た映画 (2016/12/31版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

ニーゼと光のアトリエ
ブラジルの実在の女性精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラをモデルにした物語。芸術療法や動物療法も今でこそ当たり前だけど、女性の地位が今より全然低く、患者の扱いもひどかった半世紀以上も前に行うのはさぞや苦難の連続だっただろう。

 

14の夜
ある14歳男子のいろいろなことがありすぎた一夜。煩悩と怒りと訳の分からない衝動で鬱屈する男子中学生って、こればかりは女性作家には逆立ちしても描けない世界。主演の犬飼直紀くんのナイーブさが素晴らしい。

 

こころに剣士を
監督はフィンランド人、舞台はエストニアの合作映画で、スターリン政権下で秘密警察に追われながら子供達にフェンシングを教えた実在の指導者を描く。このフェンシングクラブは今でも続いているんだそうな。

 

幸せなひとりぼっち
偏屈で変わり者で一人で生きることに疲れたじいさんが、近所に越してきた一家との交流をきっかけに、自分の人生を照らしてきた妻との記憶を今一度思い起こす。スウェーデン映画には人間観察が緻密な秀作が多いと改めて思った。

 

アズミ・ハルコは行方不明
アラサーと二十歳と女子高生でもう“三世代”としてカウントするんだってさ、わーい。その細かい区分がババアにはもうよく分からない。でも人生楽しくなるのは三十からだぜ。みんな頑張ってね。

 

ヒッチコック/トリュフォー
ヒッチコックトリュフォーの『映画術』は大~昔に読んだのだが、このインタビューの音源が残っているとは知らなかった。そして、この本を読んで、自分は映画を作る方にはからっきし興味がないのだと悟ったことも思い出したな(笑)。

 

グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状
ウィーン美術史美術館の大規模改装を機に製作されたドキュメンタリー。ヨーロッパの大美術館のドキュメンタリーは取り立てて珍しくないほどたくさんあるけど、どこでも美術に身を捧げた人々が真摯に働いているのが心に残る。

 

風に濡れた女
主演のお二人によると、これは獣が交わる話なんだそうで……成程。ごめんなさい、私、今ちょっと他のことで頭がいっぱいで、男性の描くエロスなんて単純すぎてつまんないと思ってしまったかも。でも主演の永岡佑さんはカッコいいですね。

 

聖杯たちの騎士
薄っぺらい享楽的生活を送るハリウッドセレブの脚本家と6人の美しい女性達。LoveとLifeを20年間ほったらかしにしてきた某リビングレジェンドの女性遍歴もちょっとこんなだったかも、ということにしか興味が湧かなくてすいません……(もっとも、レジェンドはもっと本業一筋だったと思うけど)。

 

海賊とよばれた男
出光の創業者をモデルにした話なんだそうで、日本のエネルギー政策にさほど興味がない人にはそれほど面白くないかもしれない。ていうか、私、この原作者が大っ嫌いでして。山崎貴監督、いつまでこの人の原作で撮るおつもりなんですかね……。

 

 

えーと、今回はいつもにも増してアホな感想でごめんなさい……。年内の更新はこれで最後です。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。

 

(前回の続き)アニメがいっぱいな話。

 

前回の記事に少しだけ書いた【この世界の片隅に】ですが、口コミでじわじわと観客動員数を伸ばしてきているそうですね。館数拡大・ロングランの様相を呈してきたようで、喜ばしい限りです。

 

既にご存じの方も多いかと思いますが、【この世界の片隅に】は、戦争が時代背景になってはいるけれど、あくまでも主人公のすずさんの日常の生活を淡々と描いている作品です。そうは言っても、実際は大変エグいことも次々起こっていて、後からよくよく考えるとじんわり刺さってくるのですが、例えば【火垂るの墓】みたいな脳天をかち割られるような激しい衝撃を受けることは少なく、観終わった後はほっこりと暖かく、拍子抜けするほどの穏やかな印象が残ります。これは、登場人物の人達が、その奥ゆかしく柔らかくも強靱な意志により、辛い時代の中でもあくまでも普通の暮らしを貫こうとしていた姿が描かれているからではないかと思いました。(ただ、【火垂るの墓】みたいな作品があればこそ、本作のような作品も成立しうるのかもしれないとも思いましたが。)
また別の側面として、本作は、知らない家にお嫁に来たある少女が、様々な経験を経て酸いも甘いも知った一人の女性に成長する中で、自分の居場所って何だろうと考え続け、“この世界の片隅に”居場所を見つける物語でもあるように思いました。
そんなすずさんの成長を声で演じている能年玲奈さん(本名)。本当に素晴らしい。やはり彼女の才能は、同年代の数々の女優さんの中でも頭ひとつ抜けているのではないかと思いました。

 

君の名は。】が興収で邦画の歴代2位まで上がってきたそうで、また【映画 聲の形】も未だに動員を伸ばしているそうですね。昨年には【バケモノの子】の大ヒットもありました。宮崎駿監督が新作に意欲を示していることが伝えられ、そうなったらそうなったで大変嬉しいことではあるのですが、もしそうならなかったとしても日本のアニメーション界はやっていけるのかもしれない、という確信がもたらされつつあるのが凄いと思います。

 

あ、そう言えば一つ思い出したことが。
たまに、【この世界の片隅に】を誉めようとしてうっかり【君の名は。】などをディスっている人を見かけるのですが、意味ないんじゃないでしょうかね。タイプの違う作品だし、どちらの作品も素晴らしいので、それでいいじゃないですか。
ただ、【君の名は。】がどうしてここまでヒットしているのかな~とつらつら考えていて、自分自身は、ボーイ・ミーツ・ガールとか運命的な恋とかいったモチーフにも、RADWIMPSの音楽にも、若い人達みたいには反応しきれていないかもしれないな~ということに思い至りました。つまり、皆様の周りにもし【君の名は。】への反応が鈍い人がいたとしたら、その人はきっと、私みたいに、人生にもう大して憧れやときめきが残っていないジジババなんですよ。だから、可哀想だと思って生温かい目で見てスルーしてやって下さいね。

 

しかし、これだけいろいろ書いといて本当になんなんですが、実は今、私の頭の中は『ユーリ!!! on ICE』でいっぱいだったりします……。ここまで来て、今年の大本命はこれだったか~ !! というね。もうね。ズブズブズブズブ……。ちなみに【この世界の片隅に】と同じMAPPAという会社の制作です。MAPPAすげ~~~。

 

『ユーリ!!! on ICE』についてはまた機会がありましたら。

 

(2016/12/08追記)
第10滑走をリアルタイムで見た!
今まで、BLに寄せすぎたら視聴者を限定してしまいすぎるんじゃないのかな~、とか心密かに思っていたこととかが全部いっぺんに馬鹿らしくなった。
Love conquers all. 他のことはくだらない。本当にもう全部くだらない。
世界中のあらゆる形の総ての愛を全力で祝福します!

 

最近見た映画 (2016/12/05版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

この世界の片隅に
今年ナンバーワンの呼び声も高い。特に異論は無い。

 

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気
同性のパートナーに遺族年金を残そうとして戦ったカップルの実話の映画化。性的マイノリティの権利獲得という側面も無視できないけれど、死という別れを前にした二人が愛を完遂する物語でもあるところに、涙せざるを得なかった。

 

ぼくのおじさん
ぼんくらで屁理屈ばっかりで生産性ゼロの、自称哲学者のおじさん。それでも見ていて嫌にならずにほんわか楽しくなってしまうのは人徳なのかな。トボけた味の松田龍平さんとしっかりものの大西利空くんの組み合わせがナイス。

 

カレーライスを一から作る
グレートジャーニー・関野吉晴氏の大学の授業をドキュメンタリー化。命を育むのは大変だということ、私達はその命を戴いて生きていることを再認識。そうしたことを、時間を掛けて少しずつ体感していく学生達の姿自体も面白い。

 

聖の青春
持病のため29歳で早逝した村山聖棋士を描いたノンフィクションを映画化。一日でも長く指したいならもっと節制を…と思わないじゃなかったが、自分の寿命を分かっていればこそ自分を燃やし尽くしたかったのかもしれない、と思い直した。

 

エヴォリューション
女性達が美少年達を監禁して怪しい手術を施す島って、男女逆だったら発禁レベルでは……。好き嫌いははっきり分かれると思うが、この独創性は他に類を見ない。壮絶なまでに美しい海中の景色がまたおどろおどろしい。

 

ジュリエッタ
不幸な誤解や偶然が重なった結果、子供と行き違って失踪までされてしまうなんて、親から見たら完全にホラー映画かもしれない。あからさまな悪意で場をかき乱す、アルモドバル作品ではお馴染みのロッシ・デ・パルマ先生がコワい。

 

オケ老人!
間違ってご高齢者ばかりの激ヘタ楽団に入ってしまった主人公を杏さんが演じるコメディ。いくつかの伏線もきれいに回収されててとてもウェルメイドだったけど、途中でいきなり上手くなってしまうところだけちょっと気になったかな。

 

ブルゴーニュで会いましょう
ブルゴーニュの家族経営のワイナリーって、それだけで心ときめく舞台設定だわね~。お話は少々都合よく進み過ぎな気もするけれど、ブルゴーニュのワイン造りの雰囲気が味わえるのは素敵。隣家の名醸造家のマダムがかっこいい。

 

ミュージアム
小栗旬さんが仕事仕事で家庭が崩壊している旦那の役というのは新しいと思ったが、猟奇殺人もの自体には食傷気味かも。どの作品でもショックを与えることばかりが大事で、結局、殺人の動機を後付けするのに四苦八苦している印象がある。

 

溺れるナイフ
十代特有の十全感とそのほころび。きっとあとしばらくしたら取るに足らないことになるんだろうけれど。細かく見たらいろいろ欠点もあると思うけど、菅田将暉さんや小松菜奈さんの瑞々しさをこれだけ描けていればいいような気がする。

 

五日物語 3つの王国と3人の女
17世紀に書かれたイタリアの寓話を【ゴモラ】のマッテオ・ガローネ監督が映画化。人間の果て無き欲望とその対価、がテーマかな?ちょっと取っつきにくいけど、グロテスクでダークなイメージはちょっとテリー・ギリアム監督作品みたい。

 

ジムノペディに乱れる
会う女会う女、みんな股広げて寄ってくるとか、さすがはロマンポルノ、男の夢が満載だ!でも、板尾創路さんからうらぶれた男の色気をここまで引き出してみせた行定勲監督は、やっぱりちょっと凄いかもしれない。

 

雨にゆれる女
過去の悔恨に現在が侵食され引き摺られていく。下手すると煮ても焼いても食えない自己陶酔型ハードボイルドになりかねないところを、青木崇高さんが血肉化させていいバランスで成立させていたのでほっとした。

 

この世界の片隅に】の感想はまた後日アップさせて戴ければと思います。

 

今回は他にこのような映画も見ました。

誰のせいでもない】はヴィム・ヴェンダース監督の新作ですが、理由はどうでも、煮詰まる作家の話というのはちょっとお腹いっぱいかもしれません……。

湾生回家】は、戦前に台湾で生まれ育ち終戦時に引き揚げてきた「湾生」の人達を追ったドキュメンタリー。多くの人が今でも台湾に強い郷愁の念を抱いているということを知り、日本と台湾の独特な結びつきの礎はこのようなところにもあるのかと思いました。

疾風ロンド】はヒドいですね~。何万人も殺せるような炭疽菌が流出、なんて事態になったら、普通の感性を持ってる科学者なら、自分達だけでなんとかしようとせずに真っ先に警察に駆け込むとかするんじゃないすかね。阿部寛さんの出演作でここまでハズしたと感じたものは今まで無かったんですけどね……。