たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2017/09/18版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

散歩する侵略者
人間から“概念”を奪う宇宙人を想定した思考実験。個人的にこれが黒沢清監督の最高傑作だと思うのは、今までの作品の中で最もストレートに愛を描いているから。女優として完全に第二期に突入した長澤まさみさんの勇姿も目撃しておくべき。

 

幼な子われらに生まれ
これだけ離婚や再婚が当たり前になっているのに、離婚や再婚のその後を描いた家族ドラマはまだまだあまりにも少ない。そんな時代の一つの雛型になれる作品だと思う。浅野忠信さんや田中麗奈さんの新境地も見逃せない。

 

おクジラさま ふたつの正義の物語
結局【ザ・コーヴ】はコワすぎて見ていない……。海外の人達の一方的な物言いは本当にどうかと思うけど、日本側も意見があるなら、分かってもらえないとイジけてないでもっと発信していかなければ。そして私は、捕鯨を続けてる千葉の県民の一人として、鯨を食べる機会をもっと増やそうと思いました。

 

パッション・フラメンコ
カルロス・サウラ監督の【フラメンコ】はど定番のクラシックとして、それ以来最も興奮したフラメンコのドキュメンタリー。フラメンコってこんなふうに進化してるのか。脂の乗りきった40代のサラ・バラスのカッコよさが筆舌に尽くしがたい。

 

三度目の殺人
裁判をテーマにした現代の『藪の中』。被告の男の言うことをどう捉えるかで解釈が変わる。コレエダ版の【羅生門】だと宣伝すれば、海外の映画祭でももっとアピールできたのでは?ただ、自分の運命を諦めちゃっているような被告の男のメンタリティは、どのみち海外の人にはウケにくいかな?

 

エル ELLE
自分以外は何一つ信用しておらず、強姦という目にあってすら自分一人で解決しようとする。決してお綺麗ではなく、善人でも極悪人でもなく、あるがままに我が道を行く“彼女”。こういう女をわざわざ描こうとするなんて、ポール・ヴァーホーヴェン監督はどこまでディープな真性の女好きなんだ……。

 

パターソン
ささやかな日常とささやかな愛で形づくられた個人的領域、から無限に広がる世界。ここしばらくのジム・ジャームッシュ監督作では初期作品のテイストに最も近く、当時の作品群に当てられた世代としてはどストライクだった!

 

ベイビー・ドライバー
のっけから銀行強盗のシーン。そして童顔で無表情の凄腕ドライバーが超絶テクニックで逃げる!ボーイ・ミーツ・ガールあり、キャラの濃い悪党達のピカレスクあり。エドガー・ライト監督ってやっぱり映画の面白さのツボを分かってる!

 

新感染 ファイナル・エクスプレス
列車という走る密室が舞台というのが新機軸。ゾンビものが苦手な私にも楽しめたのは、親子愛や夫婦愛、同胞愛から兄弟愛から自己愛まで、様々な形の愛が描かれていたからだと思う。生き残れた人数は思っていたより少なかったけど。

 

ダンケルク
林修先生の解説CMが大変分かりやすかったのでお勧め。撤退戦を描くというのは戦争ものとしては新機軸だったとは思うけど、どうしてネタ切れになった映画監督は戦争ものに手を出したがるのか。C・ノーラン監督、あなたもですか…と脱力せざるを得なかった。

 

禅と骨 Zen and Bones
ヨコハマメリー】の中村高寛監督作。京都の天龍寺にはヘンリ・ミトワさんという風変わりな禅僧がいたんだそうな。なんだか破茶滅茶な映画だけど、数奇な運命を辿った一人の日系アメリカ人とその周囲の人々の物語、と思えば興味深いかも。

 

ワンダーウーマン
結局、殴り合って強かった方が勝ちという旧態依然としたマッチョ的世界観の主役を女性にすげ替えただけなんじゃないだろうか……。強いってそういうことなんじゃなくない?そういう形のヘゲモニー自体に世界的に限界がきているんじゃないか常々と思っているのだが。

 

月子
【海辺の生と死】の越川道夫監督作。演技や演出で知的障害をきちんと描けていたのかなぁと思うと多少疑問が残らないじゃない。でも、現実の時間の流れを彷彿とさせるじっくり描かれた“間”の中に、独得の質感が感じられた。

 

ボブという名の猫 幸せのハイタッチ
寂しさから薬に溺れた青年が猫のおかげで立ち直る、というストーリーはかなりベタな気がするけれど、実話ベースならしょうがない。それより、その実話の本物の猫が自身の役で出演しているというのがスゴいんだけど!

 

関ヶ原
原田眞人監督作品って、言いたいことがありすぎて情報量多すぎで、早口で聞き取りづらいことが多い気がするのだが。で、トータルの感想は……『真田丸』の方が面白かったかな……。

 

 

今回は見応えのある作品が多かったですね!上からX番目までの映画は漏れなくオススメです!

 

 

最近見た映画 (2017/08/17版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣
ウクライナ出身の天才バレエ・ダンサー、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー。現代に生きている人間であれば、傷ついたり悩んだりするのはむしろ当然で、それが奇矯な言動に見えてしまうのなら、それは“天上の世界”を指向し続けるバレエ界のある意味での“歪み”に由来するのでは。彼が自分の才能を遺憾なく発揮できる場に巡り会えるように願ってやまない。

 

海辺の生と死
【死の棘】の島尾敏雄島尾ミホ夫妻の戦時下の沖縄での出会いを描く。愛を知った女性への変貌を体現する満島ひかりさんの圧倒的な女優力に打ちのめされつつ、今まで避けてきた【死の棘】をやっぱり見なきゃ駄目か~と頭を抱えた。

 

夜明けの祈り
第二次大戦後のポーランド。占領軍の蛮行により妊娠させられた修道女たちに、危険を冒しながらも寄り添ったフランス人女医の実話。下卑たセンセーショナリズムに堕さず、絶望的な状況に対する真摯な苦悩や祈りや救済の物語になっており、むしろ静謐な印象を受けた。

 

ハートストーン
アイスランド大自然に囲まれた小さな漁村を舞台に、幼馴染みの少年に思いを寄せられる思春期の少年の繊細な感情を描く。しかし、少年のお姉さん達とガールフレンド達が全員金髪のロングヘアでごっちゃになるという個人的大失態を犯してしまった……。

 

山村浩二 右目と左目でみる夢
米国アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネート歴がある山村浩二監督の最新短編集。古今東西のモチーフの多様さに目を見張らされる。コクトーピカソ、サティによる伝説のバレエ「パラード」をモチーフにした『サティの「パラード」』は見どころの一つ。

 

ブレンダンとケルズの秘密
【ソング・オブ・ザ・シー 海のうた】のトム・ムーア監督の長編デビュー作(ノラ・トゥーミー監督と共同監督)で、ケルト美術の最高峰と言われる『ケルズの書』について想像を巡らせる。音楽もKiLA (キーラ)が担当。どこを切ってもアイリッシュのエッセンスが満載で素敵。

 

きっと、いい日が待っている
1960年代のコペンハーゲンの養護施設で実際にあったという少年達への日常的な虐待。目を覆うようなエピソードの波状攻撃に、この邦題が俄には信じがたくなる。日本も含めた世界の各地で似たような事件が起こり続けていることに暗澹たる気持ちになった。

 

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ
ファストフードとしてのマクドナルド的手法を確立した人々と、マクドナルドをフランチャイズ化して大儲けをした人は別人だった。お金という正義の前では人間性など簡単に切り捨てることができる一部のアメリカ人の商売の才能、その酷薄さやエグさを改めて思い起こさせられた。

 

ハローグッバイ
【ディアーディアー】の菊地健雄監督作。学校で同じクラスにいても交わることのなかった二人の女の子がひょんなことから行動を共にするという、一歩間違えれば退屈になりかねないドラマを見せ切る演出力が素晴らしい。しかし、もたいまさこさんがおばあさん役って……時代は流れていくのねぇ。

 

彼女の人生は間違いじゃない
福島の仮設住宅に住み市役所に務めながら週末は東京でデリヘル嬢として働く女性の話を廣木隆一監督が描く。ほぼ全てタイトルが物語る通り。妻を失い農業ができなくなりパチンコに溺れ娘に苦労を掛ける彼女の父親の姿も、肯定はできないけれど痛々しかった。

 

獣道
【下衆の愛】の内田英治監督作。男女のダブル主演という苦肉の策にも見える手法がとっちらかった印象を与えるし、荒削りで整理し切れていない感は否めないが、泥沼の中で修羅の道を突き進む青春をポジティブに描き切るこの勢いは買いたいと思った。

 

甘き人生
幼い頃に母親を自殺で亡くし心を閉ざしてしまいがちになった男性が、愛する人を見つけて新たな人生を踏み出すまでという自伝に基づく物語。夢のように甘くて優しすぎる母親の記憶が切ないが、マザコンをこじらせたイタリア男は手のつけようがないという印象も強くした。

 

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン
19世紀アメリカの高名な詩人エミリ・ディキンスンの生涯。しかし、そもそもエミリ・ディキンスンをよく知らなかったのが大失敗で、あまり思い入れをもってストーリーを追いかけることができなかった……。

 

密使と番人
【Playback】の三宅唱監督による時代劇。演出力の手堅さは見て取れたけど、予算的な問題かキャストも場面も限られているため、どういうドラマが展開しているのか分かりにくい気がして、ちょっと残念だった。

 

 

何もかもはかどらない今日この頃。まぁこんな時期もあるか。気長にやるしかないですかね。

 

ジャンヌ・モロー様の訃報を聞き、彼女の年齢からして仕方のないこととは言え、残念な気持ちになっております。自分にとって、何回生まれ変わってもあんなふうにはなれないだろうなぁという憧憬をもってただひたすら尊敬するしかない女性がこの世にごく少数いらっしゃっるのですが、ジャンヌ・モロー様はそんな女性の一人でした。謹んでご冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 

 

最近見た映画 (2017/07/16版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

残像
ポーランド社会主義政権に弾圧された芸術家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキを描く。アンジェイ・ワイダ監督が一生を掛けて戦ってきたものがこの映画に詰まっている。真の巨匠の遺作にふさわしい作品だった。

 

歓びのトスカーナ
トスカーナの精神診療施設から抜け出した二人の女性は、それぞれにガラスのように繊細な壊れた心を抱えていた。ここまで滅茶苦茶で傍迷惑な振る舞いを続けざるを得ない二人の壊れっぷりの生々しさが胸に迫った。

 

メアリと魔女の花
時代も、そもそも創る人も違うから、高畑・宮崎ジブリの再現はあらゆる意味で不可能だと思うので、米林宏昌監督には、(スポンサーが何と言おうとも)ご自身が心から好きだなぁと思える路線を追求していって欲しいと思います。

 

地獄愛
【変態村】のファブリス・ドゥ・ベルツ監督作。嫉妬深いメンヘラ女は恋人&結婚詐欺のパートナーにするには向かないんじゃないかと思うのだが。これを愛だと言われても困るが、男の方も大概だから、どっちもどっちの泥沼愛。

 

セールスマン
すっかり名匠の貫禄がついたイラン出身のアスガー・ファルハディ監督。このおっさん(ある登場人物)は万死に値するほどの所業をしでかしたし同情する必要なんて一切無い、と私なんぞは思った。

 

ありがとう、トニ・エルドマン
ほぼ変人の父親に振り回される娘。こういう家族がいると実際扱いに困るだろうけど(笑)、娘の方も、そもそも家族に心配させるような生活を送っている以上、一人前と名乗るには何かが少し足りないのではなかろうかとふと思った。

 

22年目の告白 私が殺人犯です
どんでん返しの連続!消去法でいくと犯人はアイツしかいなかったのに、まんまと引っ掛かってしまった!残酷描写があるので注意した方がいいけど、入江悠監督作品では【SR サイタマノラッパー】シリーズの次に面白かったかもしれない。

 

裁き
自殺を煽る歌を歌った容疑で捕まった老齢の歌手が裁判に掛けられる。普通のインド映画を見ても分かりにくいインドの一般的な生活感覚がちょっと見えてくる……といいんだけど、私の能力ではいろいろと読み解けなかった……。

 

 

ポン・ジュノ監督の【オクジャ/okja】を見たい一心で、Netflixを1週間だけ仮契約しました!作品は監督らしい皮肉の効いた内容でとても面白かったのですが、私が真っ先に抱いた感想は「やっぱりこれ、映画館で観たかったかな……。」根が古い人間なせいなのか、家で映像作品を見ようとしても他のことに意識が行ってしまいがちで、どうも今一つ集中できないというか、映画館みたいに暗闇に全身を預けるみたいな没入体験ができないのがどうも物足りないというか。作品によってはそこまで感じることもないのですが、ポン・ジュノ監督の作品ともなると、やはり画面の隅から隅まで愛でるように観たい、といいますかね。
あ、でも、仮契約したついでに、未見だったテレビアニメ作品(山本沙代監督の『LUPIN the Third 峰不二子という女』と湯浅政明監督の『四畳半神話大系』)を見ることができたのはよかったです。やったね!

 

最近見た映画 (2017/06/12版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

武曲 MUKOKU
剣道をテーマにした作品を見たのは『六三四の剣』以来かも。常人には理解しがたい命のやり取りをする道があり、その中で苦しみ抜く綾野剛さんが凄い。村上虹郎くんとの化学反応は必見!個人的にはこれが熊切和嘉監督の最高傑作だと思う。

 

マンチェスター・バイ・ザ・シー
兄の死をきっかけに故郷に帰り、決して消せない自分の過去と向き合う話。生きていれば前に向かって進んでいくしかない、完全に拭い去ることは出来ないのだとしても。人生の機微を丁寧に描いた傑作。やればできるアメリカ映画。

 


視力を失いつつあるカメラマンと、彼を愛するようになる女性の物語。ディスクライバー(音声ガイドの原稿を書く仕事)という職業を初めて知った。見える世界と見えない世界の境目にこれだけ迫った映画は見たことがなかったかもしれない。

 

夜明け告げるルーのうた
何度も書いているかもしれないが、湯浅政明監督は控えめに言って天才!可愛いルーちゃんも、寂れた漁港の街の描写も、田舎に馴染めず鬱屈していた少年の物語も、音楽のように弾け飛ぶアニメーションも、何もかもが素晴らしい!

 

海辺のリア
おそらく認知症である元有名俳優とその家族が語る物語に『リア王』が重なり合う。名優しかいない出演者の中でも、コートを羽織ったパジャマ姿で海辺を彷徨う仲代達矢大先生は圧巻オブ圧巻。今後の映画も全出演作見ますんで、どうぞいつまでもお元気で。

 

ザ・ダンサー
モダンダンスの祖ロイ・フラーのサーペンタインダンスというものを初めて知った。白い衣装をはためかせ色とりどりの照明が当てられるダンスが超絶美しい。ミュージシャンであるソーコさんの強い意志が感じられる顔つきがヒロインにぴったり。

 

家族はつらいよ2
前作同様、我儘勝手で被害者意識いっぱいの爺さん(橋爪功さんが上手すぎる)にウキーッとなりつつも、いろんな人生が透けて見える展開に、しょうがないな~と思わされる。間近でいきなり誰かが急死した時のマニュアルにもなるかも?

 

メッセージ
誠に手前勝手な印象では、【未知との遭遇】に『ツイン・ピークス』の時空の歪み感とモノリス(何故ばかうけ型なのか)を足した感じ?悲劇しか待ち受けていないと分かってしまった未来に突入する勇気は、私にはとても持てませーん。

 

カフェ・ソサエティ
1930年代の華やかなりしハリウッドの雰囲気に、ほろ苦い恋のテイストをミックスして。しかしなー。不倫モノを作る時のウディ・アレンって大抵本当に不倫してたっていう過去の歴史がちょっと気に掛かるんだけど……。

 

エルミタージュ美術館 美を守る宮殿
エルミタージュ美術館の建物自体の美しさに驚かされた。エルミタージュ美術館サンクトペテルブルクやロシアの歴史と分かちがたく結びついた生きた美術館だということもよく分かってよかった。

 

ろんぐ・ぐっどばい~探偵 古井栗之助~
タイトルに違わず【ロング・グッドバイ】へのまっとうなオマージュが強く感じられた。森岡龍さんはもっともっと全国的に名前が売れて欲しい!しかし映画界の男性達はこの手の痩せ我慢系ハードボイルドが好きだよな~。私はそうでもない。

 

美しい星
三島由紀夫が60年代に書いたSFが原作。この人達は地球の心配をしてくれているのよね……?あまりにもぶっ飛び過ぎてて一見ではワケワカランかった!けど、これは絶対クセになる味。後から思い出してはジワジワくるに違いない。

 

追憶
刑事、被害者、容疑者として再会した三人は過去の秘密を共有していた。好きな俳優さんばかりで悪くないんだけど今一つピンと来なかったのは何故だろう……?見所があれこれ多すぎてコレっていう1つの流れに集約しなかったからかな?

 

僕とカミンスキーの旅
隠遁している伝説の画家と、伝記を書こうと押しかけた美術評論家ロードムービーマティスの弟子でピカソの友人、ポップアートで名を馳せたってスゴい設定(笑)。ストーリーもさることながら、エッセンスとしての美術の扱い方が楽しかった。

 

ローマ法王になる日まで
ローマ法王フランシスコ1世の半生。アルゼンチンの軍事政権下でのエピソードの数々に無力感が大きかったのは実話ベースだから仕方ないか。でも、その経験を踏まえればこその、神の恩寵を見た展開には得心がいった。

 

夜空はいつでも最高密度の青色だ
看護師をしながらガールズバーで働く女の子と、工事現場で日雇い仕事をする男の子。それぞれに見ている世界が少しずつ近づいていく物語。昼間のシーンも多かったはずなのに、夜の底みたいな青っぽいイメージが残っているのは何故だろう。

 

スプリット
何がどうスプリットなのかと思ったら人格がスプリットする話だった。監禁、ダメ、ゼッタイ。しかしシャマラン監督は、史上稀に見る意味不明映画【アンブレイカブル】の構想を諦めていなかったのね……そのことに今回一番びっくりした。

 

草原の河
チベット人監督による映画は本邦初公開なんだそう。描かれているのは父親と息子の葛藤の話。どこの世界でも人間の営みは似通っているんだなぁ。

 

 

今回は他にこのような映画も見ました。

ちょっと今から仕事やめてくる】:ブラック企業は辞める以外にどうしようもない(ことが多い)し、ミステリー部分も大体予想した通りだったので、そりゃそうだなという以上の印象を持てなかったのが少し弱かったかもしれません。

花戦さ】:この出演陣の面子を見ると見に行かざるを得ませんでしたが、野村萬斎さんや市川猿之助さんの演技には型ができてしまっている印象があり、お話もどうも型に嵌まった印象になってしまうんですよね…。

 

 

なんかまた前回の更新から日が開いてしまい、公開終了になってしまった作品が多くなってしまって申し訳ありませんでした……。次回はもう少し更新の頻度を上げるべく頑張りたいと思います……。

 

ところで。
ついに!ついに!ついに!ついに!テリー・ギリアム監督がドン・キホーテを殺した男】を撮り終えたっていうニュースを聞きました!うぉぉぉぉマジですか~~~!【ドン・キホーテ…】は決して実現しない物事のことを指し示す代名詞かと思ってましたよ~~~ !! 実現する日が来るなんてウソみたいです~~~ !!

 

最近見た映画 (2017/05/03版)

 

ここ2ヵ月でこんな映画を見ました。

 

彼らが本気で編むときは、
私の好きなものばかりたくさん詰まった映画。リンコさんとマキオくんのカップル最強!周りの人物の描き方も丁寧。そして、ち○こを108個編んで供養するという発想がぶっ飛んでいて素晴らしい。

 

わたしは、ダニエル・ブレイク
費用を効率的に使うためであるはずのシステム化が人間性を蹂躙し追い詰める。これはきっと現代のどこの社会にもある話。最後の巨匠ケン・ローチ先生、どうかどうか、まだまだ頑張って戴きたい……。

 

午後8時の訪問者
そうやってあまりに非人間化された社会の中、人間性を取り戻そうとする試みが一方で地味に始まりつつあるのではないかと思うこともある。良心という一見陳腐に思える概念がその鍵となる。

 

バンコクナイツ
タイの歓楽街の映画と聞いてもピンとこなかったけど、日本社会とこんなにダイレクトに繋がっているんだな。そして何よりも、あまりに映画的としか言いようのないこのダイナミックさと豊穣さに驚かされた。

 

ヨーヨー・マと旅するシルクロード
ヨーヨー・マさんが音楽で世界と戦っているように、美しいものや楽しいものや可愛いものや光り輝くもので世界と戦いたいと思う。昔アルバムを買ったガイタ吹きのクリスティーナ・パト姐さんが超カッコイイおばさんになっていて痺れた。

 

娘よ
パキスタンイスラム部族の村で幼い娘が結婚させられそうになり母親と逃げる話。普通あそこで親切なトラック運転手は通り掛からないと思うが、実際逃げるということはそれだけ至難の業なんだろうなぁ……。

 

夜は短し歩けよ乙女
この圧倒的なイマジネーション!湯浅政明監督は控えめに言って天才!原作は5ページで挫折したが、このような形で映像化してもらえると咀嚼することができてありがたかった。

 

タレンタイム 優しい歌
マレーシアの巨匠ヤスミン・アフマド監督の遺作。暴力と不寛容の時代に、ユーモアを持って生きる方法を説く。本当につよくてやさしい人じゃなきゃこういう映画は創れないと思う。

 

お嬢さん
スレた人間ばかりが出てくる心寒い化かし合いの話かと思っていたら、とんだロマンティック純愛ストーリー(女性同士)だった。ヘンな日本語でもオッケーイ。今の日本にこの役が演じられる若い美人の女優さんはほとんどおらん。

 

チア☆ダン
そんな今の日本でイチオシの若手女優トップ2がご出演。内容的には【スウィングガールズ】のn番煎じのような気もするが、わざわざ実話を探してきてこれだけ丁寧に作られていたら文句は言えねぇ。

 

サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ
人々の生活の中から立ち上がってくるフラメンコの生々しさがとても好み。個人的にはカルロス・サウラ監督の【フラメンコ】に次ぐフラメンコ・ドキュメンタリーの名作だと思う。

 

ムーンライト
ゲイの少年がアイデンティティを求めて彷徨う。これまで描かれ難かったアメリカ社会の様々な様相を映し取る本作がアカデミー賞の作品賞になったところに、アメリカの内面的な変質を感じた。

 

未来よ こんにちは
夫に離縁され、認知症の母に先立たれ、仕事も絶不調で、孤独まっしぐらの中高年のヒロイン。まったくもって他人事じゃないこの寄る辺なさも、お友達にして生きていくしかないんだよねぇ。

 

はじまりへの旅
ちょっと変わったパパと森の奥で暮らす6人の個性的な子供達。こんな役があまりにもピッタリなヴィゴ・モーテンセン様。こんな人達もいるのかも?と思わせるところも、またアメリカの懐の深さ。

 

人生タクシー
イラン政府から映画製作を禁止されているジャファル・パナヒ監督。今回は“車載カメラがたまたま撮った映像”としてタクシー運転手を主人公にした本編を制作。映画への飽くなき執念が凄すぎる。

 

モアナと伝説の海
そもそもハリウッド映画は世界中の文化を食い散らかしているので、ディズニーがポリネシア文化を食い物にしているという批判は今更。本作を見てポリネシア文化を理解した気にさえならなければいいんじゃないの?

 

しゃぼん玉
一歩間違えるととんでもなく陳腐になりそうなストーリーだけど、市原悦子さんや綿引勝彦さんの演技の安定感が半端なく、安心して見ていられた。それに私、林遣都くんが出てるとどうも見ちゃうという癖が……。

 

メットガラ ドレスをまとった美術館
服飾の歴史を美術史に組み込むのはいいとして、資金集めのためとはいえ年一回ハリウッドセレブを招いてどんちゃん騒ぎするのをシステム化する必要があるのか。良くも悪くもアメリカ文化の縮図だなーと感じる。

 

汚れたミルク あるセールスマンの告発
グローバル企業の不正を告発しようとした個人が受ける妨害、という英雄物語に留まらない様々な位相を見せる本編は、現代社会のままならなさそのものを表現しているのかもしれない。

 

ひるね姫 知らないワタシの物語
夢の世界と現実世界のリンクが分かりにくいというか、ちょっとご都合主義的では?あと、元岡山県人としては、他県人の話す岡山弁がどうしても不自然に聞こえてしまうのは致し方あるまい。

 

 

3月からこの方、自分史上かつて無いほど仕事が忙しい日々が続き、法事が重なり、その間にイベントがあり……もともと虚弱な私めは、ちょっと疲れました。例年より見ている本数も全然少なく、もう終わってしまっている映画ばかりですが、自分の備忘録として挙げておきます。

 

最近見た映画 (2017/02/25版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

沈黙 サイレンス
個人的にはマーティン・スコセッシ監督の最高傑作なんじゃないかと思う。もしかしたらこのまま今年No.1になってしまうかもしれない。

 

サバイバルファミリー
おそらく、先の震災時に停電で右往左往したひ弱な都会の人間(私も含め)がモデルだけど、電気がなくなったらどうなるかというのは非常に重要な思考実験だろうとは思う。ついでに家族の絆を再構築する話でもある。

 

牝猫たち
デリヘルで働く三者三様の女性達。ふわふわと実態のない今の社会のある側面が彼女達に投影されている、と思って見ると興味深い。個人的には今回の日活ロマンポルノのリブート企画の中で一番面白かった。

 

未来を花束にして
イギリスの女性参政権運動を描いた物語。女に政治を考える能力はな~い !! という有形無形の様々な攻撃にどっと疲れる。何故か【マルコムX】を思い出し、権利獲得の歴史とは戦いの歴史である、としみじみ反芻した。

 

ショコラ 君がいて、僕がいる
20世紀初頭のフランスで、差別や偏見に翻弄され時代の波に消えていった天才黒人芸人ショコラ。白人の相方との一筋縄ではいかない関係が切なかった。

 

恋妻家宮本
妻への愛を再確認する中年男。遊川和彦先生はもしかして、原作などの縛りがあった方が突飛な方向に走りすぎなくていいのではあるまいか。

 

海は燃えている イタリア最南端の小さな島
アフリカや中東からの難民の波に晒される島の人々の静かな生活。思うところのあった皆様には【海と大陸】や【13歳の夏に僕は生まれた】などをお勧めしてみる。

 

ANTIPORNO
何かを語り出す前にイメージ映像の羅列で終わってしまった印象。園子温監督、これなら引き受けない方がよかったのでは? でも昨今“平凡な中年女性のエロス”市場を一手に引き受けている筒井真理子先生だけでも見る価値はあるかもしれない。

 

たかが世界の終わり
家族内に軋轢があったりするなんてよくある話よねー、という私なら1分で終わってしまう話を100分に引き伸ばすのがグザヴィエ・ドラン・クオリティ。でもこれまでの同監督作の中では本作が一番好きだったかな。

 

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
愛が醒めていた妻を事故でいきなり失った男の逡巡に寄り添う。地味と言えば地味。この男がジェイク・ギレンホールさんでなければ成立しなかったかもしれない。

 

ゾウを撫でる
映画を作る様々な人々を丁寧に描いた群像劇。もう少し強めのキャラやエピソードを核にした方が遡及しやすかったのでは?と思うけど、佐々部清監督は敢えてそういうのではない方向性で描きたかったのかな?とも思う。

 

 

今回はこの他に、【人魚姫】(チャウ・シンチー監督)【なりゆきな魂、】【島々清しゃ(しまじまかいしゃ)】などの作品も見ました。【愚行録】や【ホワイトリリー】はイマイチだったかな。
今回は家族が一瞬入院してしまったりして、思った以上に更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。それにしても。今年は見る本数がぐっと減りそうだという予感はありましたが、思った以上かもしれません。

 

ところで、清水富美加さんのことが少し騒がれていますね。伝えられている情報から想像するに、彼女を広告塔にしたかった宗教団体側と、彼女がいた芸能事務所側の思惑が一致せず、双方であることないことをぶつけ合っている状態に見えるのですが、どうなのでしょう。
私はこの件に関して言いたいことが1つだけありました。私は、彼女が朝ドラの後に出演していたテレビ東京『SICKS』というドラマの、マユきち先生役が大好きでした。この役を演じる彼女を見て、この人はなんて感受性に溢れていてなんて才能があるんだろう、と感動に近いものを覚えたことが忘れられません。だから、彼女がかつて携わったいくつかの仕事に関してネガティブな発言をしているのを聞き及び、もし彼女がこのドラマの仕事のこともあまり好きではなかったとしたら、それはとても悲しいかもしれない、と思いました。
芸能界という特殊な世界にいれば、本当に吐き気がするような嫌な仕事だって少なかならずあるのかもしれない、ということは想像に難くありません、が、それを口に出すのはよくよく考えてからにしてもらえないものでしょうか。芸能界は夢を売るのが仕事だし、かつてそこに携わることになった過程には自分自身の意志が少なからず介在していたはずですから。だからと言って総てをただ黙って我慢しろと言っているのではありませんけれども。

 

鈴木清順監督のご冥福をお祈り申し上げます。宮崎駿監督、新作お待ち申し上げております。YOI熱は続行中。毎度とりとめがなくてすみません。

 

映画【ゴンドラ】の思い出

 

伊藤智生監督の【ゴンドラ】という映画のリバイバル上映があり、大昔にテアトル新宿で観て以来、ほぼ30年ぶりくらいに拝見させて戴きました。

伊藤監督は、このたび30年ぶりに二作目の劇場用長編を撮ることを決意し、その決意をより確かなものにするために本作のデジタルリマスター版を作成したそうです。そして、2/11から2/24までの2週間、ポレポレ東中野で、このリマスター版の上映が行われるそうです。

私が見たのは、それに先だって行われたユーロスペースでの35ミリフィルムの上映でした。このフィルム版は、経年劣化はあっても、まだ何とか上映可能な状態だったとのこと。そして今や、35ミリフィルムを上映できる映画館は都内でも数えるほどしかない、と聞くと、やはり歳月の流れを感じてしまいますね……。

 

 

私が【ゴンドラ】に思い入れがあるのは、この映画がかつて、【戦場のメリークリスマス】、【ゴダールのマリア】、パトリック・ボカノウスキー監督の【天使】などともに、自分を映画という底なし沼に引き摺り込んだ映画のうちの1本だったからです。

海外との合作映画だった【戦メリ】などは別にして、それまでの日本映画は、泥臭いとか暗いとか、はたまた過度にミーハーであんまり中身がないとか、そういうダサいイメージでした。(当時の自分はまだ、角川映画なんかを穏当に評価できるほど、こなれていなかったし。)そういった固定概念を完全に覆して、日本映画にも観るべき作品はあるからちゃんと向き合わなければならないのだ、ということを決意させてくれたのがこの映画でした。

 

 

でも実際に再見してみて唖然としました。というのも、内容をほぼ忘れてしまっていたからです!

主人公の少女のちょっと衝撃的な登場シーンもそうですが、もう一人の主人公というべき青年の存在がすっぽり抜け落ちていたのにはかなり驚きました。そして、青年を忘れていたということは、清掃用のゴンドラに乗ってビルの窓を拭いている青年の登場のシーンも、その後のストーリーもほぼ忘れていたということで、少女が死なせてしまった小鳥の埋葬場所を探すくだりも、青年の故郷の寂れた漁村も、あまりに美しい海の色も忘れていたということで、


覚えていたのは、

少女がどこだか分からない線路の上を一人歩いているところと、

熱を出した少女のかすむ意識の端に口論する両親がおぼろげに映るところと、

二人が乗った小舟が夕焼けの海に逆光で浮かび上がるところの、

3つのシーンだけでした。


そう、まばゆい黄金色の海に浮かんだ小舟はまるでゴンドラみたいだった。あれが映画のラストシーンだった。


不思議なもので、観ているうちに、忘れていたはずのいくつものシーンも記憶のどこかに刻みつけられており、確かに以前観たことがあったと思い出されてきたのです。

そういえば当時、青年が微妙な年頃の少女を連れ回すなんて話がちょっと危うく感じられて(実際は少女が青年につきまとっていたのですが)、途中まで少しハラハラしながら見ていたことも思い出しました。でも結局は、世知辛い世相に毒されている自分を見つけて、少し哀しく感じただけでした。この二人はただ、歪みのない魂のありかを求めて、きょうだいみたいに寄り添って彷徨っていただけだったからです。

 

 

実は、映画を再見する前は、もしかしてこの映画が記憶の中だけで過度に美化されているんだったらどうしようって、少々おっかなびっくりでした。でもそんな心配は杞憂に終わり、この映画が長年思い続けてきた以上に素晴らしい映画だったことに安堵し、感謝したい気持ちになりました。

もし機会がありましたら、皆様も是非一度ご覧になってみて戴けると嬉しいです。