最近見た映画 (2016/10/18版)
最近、こんな映画を見ました。
【怒り】
“怒り”とは人を信じ切れなかったことへの慟哭であるように思えた。日本映画界の最良の部分を結集して創られた紛れもない傑作でしょう。
【オーバー・フェンス】
【海炭市叙景】【そこのみにて光輝く】に続く佐藤泰志原作“函館3部作”の最終章。オダギリジョーさんと蒼井優さんががっつりラブ・ストーリーを演じれば、そりゃ名作になるだろう。脇を固める俳優陣の素晴らしさも特筆すべき。
【ザ・ビートルズ Eight Days A Week The Touring Years】
ツアーバンドとしてのビートルズに焦点を当て、デビュー前後から『サージェント・ペパーズ…』辺りまでの活動を紐解く。ビートルズというバンドの天才ぶりを改めて見せつけられて改めて驚愕したが、膨大すぎる資料映像からこの1本を削り出したロン・ハワード監督のオタクぶりも凄いと思った。
【ある戦争】
アフガニスタンの多国籍軍に参加し、部下を守ろうとした行為で罪に問われた軍人の苦悩を描く。実際の戦場での戦い、何のために戦っているのか、自分は正しかったのかというという心の戦い、裁判での戦い。デンマーク映画のポテンシャルはやっぱり半端ない。
【SCOOP!】
芸能マスコミが社会に必要な職業かどうかは常々疑問に思うけど、彼ら自身の生態の方がよほど興味深いかもしれない。メリハリのある展開はさすがに大根仁監督印の面白さ。新たな役柄に挑戦し続ける福山雅治さんもエラいと思う。
【お父さんと伊藤さん】
初老で経歴不詳のアルバイターの彼氏・伊藤さんと暮らす中年手前の女性の元に、居場所がなくなったお父さんがやって来た。一家に一人伊藤さんが欲しい~。タナダユキ監督、ほんとの男らしさって何なのかよく分かってらっしゃる。
【淵に立つ】
人間、過ちを犯すのは仕方ないけれど、その過ちに向き合えず不誠実なのが気持ち悪く、その気持ち悪さの描写が容赦なかった。しかし、親の因果を子に報いさせてんじゃねーよ、子供の人生は子供のものだよバーカバーカ。
【映画 聲の形】
原作未見で申し訳ないが、いじめる側・いじめられる側のメンタリティをここまで繊細に描いた作品はかつて見たことがなかったかもしれない。日本のアニメ界、ジブリがなくても大丈夫そうな気がしてきた。女性のアニメ監督が出てきたのも嬉しい。
【人間の値打ち】
ある轢き逃げ事件を巡っていろいろな人々の思惑と本性が交錯する。イタリア映画ってこんなふうに人間の裏側をシビアにえぐり取るのが本当に得意だ。ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ様を久々に拝見できたのも嬉しかった。
【レッドタートル ある島の物語】
名作【岸辺のふたり】のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の長編デビュー作にジブリが助太刀。無人島に流れ着いた青年とウミガメとの不思議な異類婚姻譚。クラシックなお伽噺みたいな端正な美しさがあって嫌いじゃない。
【とうもろこしの島】【みかんの丘】
ジョージア(グルジア)からの独立を主張するアブハジア自治共和国が舞台の2本を、岩波ホールで併映中。テーマは戦争の中での人間性。世界が平和にも安定にもほど遠くても、私達は日々を粛々と生きるしかないのかもしれない。
【ジャニス リトル・ガール・ブルー】
ジャニス・ジョプリンの切迫感や孤独感は1974年作の【JANIS】の方が際立っていたような気がするが、彼女自身の肉声や手紙の文面などを使ってトレースされた彼女の人生はやはり瞠目に値する。若い人にこそ彼女のことを知って欲しいと思う。
【過激派オペラ】
「毛皮族」主宰の江本純子監督が描く、とある劇団の勃興と衰退。女性だけの世界の特異なエネルギッシュさも見どころだけど、痴情のもつれから人間関係が崩壊し劇団が瓦解するっていうのは、よくある劇団あるあるなんじゃないのかな。
【将軍様、あなたのために映画を撮ります】
映画好きの金正日の命令で、韓国の申相玉監督とその元妻で女優の崔銀姫さんが1978年から8年間北朝鮮に拉致されていた、というのは有名な実話。北朝鮮がどういう国かということを、欧米の人々などに対してもっと喧伝すべきだ。
【ハドソン川の奇跡】
飛行機を墜落から救っておきながら事故調で判断ミスを追求された機長たちの実話、だけど、お前らコンピュータ信じすぎじゃね?と思ってたら何のひねりもないその通りのオチだったので、いろんな意味でがっくり来た。
【グッドモーニングショー】
さすが長年テレビ畑を歩いてきた君塚良一監督作だけあって、朝の情報バラエティの裏側が覗けたのは面白かった、けど、主人公の性格も言動も、犯人の動機も、ストーリーの展開も、どれもが何だか煮え切らなかったかも。
【神聖なる一族 24人の娘たち】
ロシア西部にあるというマリ・エル共和国の24人の女性が繰り広げる牧歌的な物語。二昔くらい前まではこういうローカルなテイストのヨーロッパ映画がもっとたくさんあったような気がして、なんか懐かしい気持ちになった。
【歌声にのった少年】
アラブ版の『アメリカン・アイドル』みたいな番組に出て大スターになったパレスチナの青年の実話に基づく話。パレスチナの人々も未来に希望を持ちたいと願っている。現地でスカウトしたという子供たちのキャストが秀逸。
ポーランドの名匠アンジェイ・ワイダ監督がお亡くなりになりました。
私が監督の【大理石の男】という作品を最初に見たのは、まだベルリンの壁の崩壊前で、ポーランドを始めとする東欧諸国が社会主義体制の矛盾の中で苦しんでいる時代でした。その後、監督が映画を通じて訴えかけていた自由な政治体制が実現されましたが、その過程を目の当たりにして、映画にはもしかして社会を変革する助けになる力があるのかもしれないと感じたことが、私の人生の中で最も鮮烈な映画体験の1つだったかもしれません。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。