たそがれシネマ

最近見た映画など。

もっかのベスト5!(2013/06/22)

 

東京近辺で上映中の映画のうち、現在オススメするベスト5は以下の通りです。

 

1.【はじまりのみち
(若い頃はあまり好きじゃなかった木下恵介監督作品、今観たら面白いかもしれないなぁ。)

 

2.【言の葉の庭
(アニメならではの様々な雨の表現が超絶美しく、それだけでも十二分に観る価値がある。)

 

3.【リアル 完全なる首長竜の日
(ちょっとディープなSFもの、なのに同じ黒澤清監督の超ホラー【回路】を思い出してしまったのは何故 !? )

 

3.【箱入り息子の恋
(女性経験なしの真面目一途な35歳。これが星野源さんの力で爽やかな純愛ものになるなんて何かサギ。)

 

3.【奇跡のリンゴ
(無農薬リンゴの是非はともかく、お話としては感動的だし、主演のお二人は主演賞ものだ。)

 

3.【俺はまだ本気出してないだけ
(イタい!あまりにもイタすぎる!堤真一さんのこのハマりっぷりが凄すぎる!)

 

(次点)【犬と猫と人間と2 動物たちの大震災
(そこまで動物好きではないけれど、胸が痛くなるような話が満載だった……。)

 

(次点)【イノセント・ガーデン
(ハリウッドで創ってもちゃんとパク・チャヌク映画になってるところが偉いかも。)

 

(次点)【華麗なるギャツビー
(【ロミオ+ジュリエット】や【ムーラン・ルージュ】の楽しさをちょっと思い出した。)

 

(次点)【フィギュアなあなた
石井隆監督自身が20年前に描いた劇画が原作。人形愛って一周回って今の時代に合っているかも。)

 

【奇跡のリンゴ】のお話の元となっている木村秋則さんの無農薬りんご栽培について、批判も含めたいくつかの記事を読みました。
大まかには(1)木村さんの栽培方法は他で再現することができておらず、その是非を科学的に検証することはできない、故に広く普及させることはできそうにない、(2)今では農薬の種類も撒布方法も研究されているので、昔と違って農薬を使用したりんごにも危険はない、といった内容のものが多かったでしょうか。なるほどそうなのか、と思うところも多くあり、現状では一般的に農薬の使用は避けて通れないものなのだということはよく分かりましたが、あまりにも大上段に(2)を唱えている向きには少し違和感を覚えました。
今の若い人に言ってもあまりピンとこないでしょうが、戦後の高度成長期(1950年代から1970年代あたり)の日本では、環境や人間の健康などといったものへの配慮がほとんどなされておらず、数多くの悲惨な公害事件や薬害事件が噴出していました。なので、私以上の世代の人間には、そうしたケミカルで不自然な物質(農薬も含まれます)への恐怖感が骨の髄まで染み込んでおり、もはや農薬はそんなに危険ではありませんと言われても、はいそうですかと簡単には信じられなかったりします。
それならば政府なり農家の側なり農業ジャーナリストなりが、そうした新しい見識を一般に浸透させるためにもっと何かしら手を打つ必要があるのではありませんか?そこのところをスッ飛ばして、無農薬的なものをありがたがる傾向を上から目線で批判するのはいかがなものかと思いました。

 

今回は他にこんな映画も気になりました。

 

嘆きのピエタ】はねぇ……。私はやっぱりキム・ギドク監督独特のナルシズムや女性に対する手前勝手な偶像化(もしくは甘え)が苦手で、どうしても相容れません。これは完全に相性の問題だと思うので、どうもすみませんと謝る以外にありません。

 

ローマでアモーレ】は、アモーレというよりは色ボケなんじゃないすかね。とにかくローマで何か撮りたい!というウディ・アレン監督の観光客的な浮かれ気分はある意味微笑ましかったのですが、小粋な小話のオムニバスと言うよりは明確な芯がない寄せ集めといった印象も否めず、いつものウディ・アレン作品よりはインパクトに欠けるのではないかとも思われました。

 

グランド・マスター】は、同じイップ・マン(ブルース・リーのお師匠様)を描いた先年の【イップ・マン 序章】【イップ・マン 葉問】などと較べて全然心に響きませんでした。トニー・レオンチャン・ツィイーチャン・チェンというスターを擁しておきながら、この印象の薄さは一体なんなのでしょう。そもそも、カンフーや戦前の中国文化をスタイリッシュに描くという以上の動機が感じられず、その肝心のカンフーもカット割りに頼ったつぎはぎだらけで、これでごまかされるほど観客も甘くはないと思うのですが。ウォン・カーウァイ監督は、才能だけで押し切っていたような時代も過ぎ去り、撮るべきものを見失って迷走しているのではないか、と感じられてなりませんでした。