おばさんシネマ

最近見た映画など。

『極悪がんぼ』が残念だった件

 

今シーズンのドラマはテレ朝の『BORDER』が面白かったです。死者と話せるような設定は本来あまり好きじゃないのでノーチェックだったのですが、何だか評判がいいので、クドカンさんが出る回に試しに見てみたら大ハマり。気がつけば、テレ朝の動画サイトで見逃した回まで全部チェックしてしまっていました。
やっぱり金城一紀さんは凄い。受け手のツボをよく心得ていらっしゃる人だと改めて思いました。小栗旬さんも掛け値なく素晴らしい役で、新たな代表作ができてよかったですね。
これと比べると、同じ時間帯に放送していたTBSとWOWOWの肝煎りの『MOZU』は期待を下回っていたかもしれません。何が重要なのか分かりづらいお話が延々とだらだら続くのがどうにも辛かった。season1を見終わって思いましたが、これは枝葉のエピソードをちょっと整理すれば、2~3時間の映画の尺で充分な内容なんじゃないでしょうか。綺羅星のごときキャストが勿体なさ過ぎです。

 

しかし、キャストが勿体なさ過ぎといえば、フジの『極悪がんぼ』が最たるものだったでしょう。尾野真千子さんを筆頭に、三浦友和さん、小林薫さん、椎名桔平さんに竹内力さんに板尾創路さん、宇梶剛士さんにクドカンさん、仲里依紗さんにオダギリジョーさんなど、大御所からクセ者まで一流どころを取り揃えた圧巻のキャスト。なのにコレ……。世の中には視聴率はイマイチでも抜群に面白いドラマも存在しますが、本作を最終回まで見届けるのは実際かなりの苦行でした。

 

しかしこの面子は、妥協のない仕事ぶりが評価されている人々でもありますから、これでキャストの責任云々と言うような人はさすがにいないんじゃないかと思います。
では何が問題だったのかというと、やっぱり脚本でしょう。本作の脚本は、原作の面白いエピソードを無難にまとめようとしただけといった感じが色濃くて、これだけのキャストの一人一人を充分に活かすものになっていたとは思えませんでした。
特に、主人公のキャラクター設定がひどい。そもそも尾野真千子さん演じる主人公が何故わざわざ裏街道の仕事を選んだのか、見てても全然ピンとこなかったし(普通、女性はすべからく現実主義者なのであまりリスキーな道を選ぼうとはしないと思うし、若い女性が常識外れの金額を手にしたいと思えばまずは水商売という選択肢を考えるんじゃないのかな?)、自分を陥れて余計な借金を背負わせたような男とヘラヘラとなぁなぁな関係を続けているのもよく分からない。それに、偉そうな大口ばかり叩く割に毎回不注意なヘマをするのもいただけない。鮮やかで圧倒的な天才ではないのなら、せめてついつい感情移入してしまうようなひたむきさくらい持ち合わせていて欲しいものですが、この主人公にはそういう美点は感じられませんでした。
そもそも、原作では男性だった主人公を女性に改編し、しかもわざわざオノマチを据えた時点で、主人公が女性であるべき理由やオノマチであるべき理由をもっと根本的に考え直さなければならなかったはずです。しかし、本作はあくまでも原作を都合良くアレンジしているだけで、これを一人の生身の人間の物語として再構築して描き直そうとする意志など端から無かったようにしか見えません。
逆に、彼女が演じたからこんな分裂した人物像でもまだ何とか形になっていたのであって、これがもっと目も当てられない事態になって、もっと壊滅的な視聴率を叩き出していた可能性だってあったかもしれません。

 

広島弁でドスを利かす金髪の三浦友和さんには痺れましたし、氣志團さんによるテーマソングもキャッチーでぴったりだったのに……。せめて【リーガル・ハイ】の古沢良太さんクラス以上の脚本家を拝み倒してスカウトするくらいの気合いを見せる必要があったんじゃないでしょうか。それが駄目なら、せめて実力のある女性脚本家を1人チームに入れるくらいのことはしたらよかったのでは。

 

どこかで読んだ記事によると、「『闇金ウシジマくん』と同じように昨今流行りの“裏社会”をテーマにしているから期待できる」という思惑が制作サイドにあったようですが、圧倒的な存在感で屹立するダークヒーローを中心に巧みなドラマを創り上げた『闇金ウシジマくん』は、主人公のキャラクターに魅力がなかったせいでお話が死んでしまった本作とはまるで対照的です。
『…ウシジマくん』にあって『極悪がんぼ』になかったもの、それは“こういう世界観を提示する”という強固な意志やビジョンではなかったかと思います。