たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2016/04/08版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

リップヴァンウィンクルの花嫁
かりそめの関係しか存在しないような世界にも真心や真実はちゃんと存在していて、だから人間は生きていける。【リリイ・シュシュのすべて】と本作を撮ったので、岩井俊二監督はもう巨匠ってことでいいと思う。

 

バンクシー・ダズ・ニューヨーク
謎のストリートアーティストにしてアート界のリーサル・ウェポンバンクシーがニューヨークに1ヵ月滞在して作品を発表した時のドキュメンタリー。アートに少しでも興味のある人は、批判するにせよ賛美するにせよ目撃しておかざるを得ないだろう。

 

リリーのすべて
世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話の映画化。リリー役のエディ・レッドメインさんも、その妻役のアリシア・ヴィキャンデルさんも上手すぎ!「やっと身も心も女性になれた」と微笑むリリーさんに魂を根こそぎ持って行かれた。

 

母よ、
母親の死を看取る女性映画監督の姿にはナンニ・モレッティ監督自身がある程度投影されているらしい。忙しい日常生活の中にも親の死という問題が避けて通れない皆様にしみじみ見て戴きたい中高年あるある映画。

 

家族はつらいよ
東京家族】と同キャストだけど全く別のお話。ふんぞり返って威張りちらす独りよがりな爺さん(橋爪功さんが上手すぎる)がひたすら鬱陶しいんだけど、この人の未熟さや稚拙さが最後にはほんのり可愛く見えてくるところが山田洋次マジックなんだわね~。

 

無伴奏
学生運動の時代。背伸びして恋愛していた彼女は、この先、この傷を抱えながらも前を向いて生きていくのだろう。成海璃子さん、池松壮亮さん、斎藤工さんの役者としての覚悟も、それを余すところなく掬い取った矢崎仁司監督も素晴らしい。

 

マジカル・ガール
劇中歌はアイドル時代の長山洋子さんのデビュー曲で、エンディングテーマは『黒蜥蜴』。陰鬱さが特徴的なスパニッシュ・サスペンスに、日本文化のエッセンスをマッチさせたカルロス・ベルムト監督のセンスが興味深い。こういうのも一種のグローバル化、なのかな?

 

父を探して
ブラジルの新鋭監督によるアニメーションで、経済発展により激変しつつあるブラジルの現状が男の子の目線で描かれる。色彩感覚が特に素晴らしいんだけど、この終わり方は私にはちょっぴり悲しく感じられた。

 

光りの墓
タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の最新作。夢とうつつを行ったり来たりするような作風は相変わらずだけど、本作には特に不思議な明るさと力強さがあるような気がする。

 

人魚に会える日。
13歳で撮った初長編【やぎの冒険】が話題になった仲村颯悟監督が5年ぶりに撮った最新作。ストーリー自体には若さゆえの荒さを少し感じるけれど、沖縄の現状への思いは痛いくらいに伝わってきた。

 

 

今回は他に、先年公開されて未見だった以下の映画を見ることができました。

孤高の遠吠】(小林勇貴監督)には富士宮市の本物の不良の皆さんが大挙ご出演なさっているそうで、こんな不良活動を行うエネルギーをもっと有効に使ったらいいのにと思いました(だからこそ映画でも作ってみようと思ったのかな?)が、日本全国のあちこちに転がっているのであろうこんな風景の中に蠢いている皆さんの姿を切り取ってみせているのは凄いと思いました。

Playback】(三宅唱監督)では、村上淳さんや渋川清彦さんや三浦誠己さんに学生服はあまりにも似合わねーと思いましたが、そんなちょっと無理めなストーリーも俳優さんの存在感があまりにも素晴らしいので成立していました。俳優さんの魅力を最大限に引き出す監督さんのこの手腕にはこれからも期待できるかもしれません。

 

 

ところで。行定勲監督の熊本県PR映画【うつくしいひと】が4月12日まで無料で配信されています。
これは行定監督を始めとする熊本ゆかりの人々や、熊本県内の市町村が協力して制作した映画なのだそうで、橋本愛さん、高良健吾さん、石田えりさんなどの出演者もみんな熊本出身の方々なのだそうです。重要な役どころで出演なさっている姜尚中先生(やはり熊本出身なのだそう)の存在感も悪くありません。くまモンも出てます!短編ですが行定監督の上手さが光るしっとりした良作で、一見の価値ありです。

 

(2016/04/18追記)
熊本の地震のニュースを見ていろいろ思うところがありましたが、まず何より、被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに、ライフラインと安全な環境の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。