たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2016/08/11版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

シン・ゴジラ
初代ゴジラに匹敵すると言っていい邦画最高峰のディザスター・ムービーであり、また究極のお仕事映画なのではないかと思う。尾頭課長補佐こと市川実日子さんが意外な人気を博しているのがちょっと嬉しいです。

 

パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト
人生の最後に3曲だけ好きな曲を聴いていいと言われたら、ピアソラパコ・デ・ルシアムーンライダーズにすると思う。圧倒的なリズムの中に宿る熱情的な魂。このかっこよさが分からない人とは友達になれなくていい。

 

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ
落ちこぼれクラスの生徒達が、ナチスに関する研究発表を通して学ぶということ自体を学んでいく、という実話を基にした話。図体は大きくても中身はまだまだ発展途上な子供達が真剣になっていく様がいい。フランスの学校の他民族ぶりも見どころの一つ。

 

セトウツミ
大森立嗣監督はバディものに長けているかもしれない。菅田将暉さん×池松壮亮さんだからこそできたのかもしれないけど、ほぼワン・シチュエーションのみの会話劇だって映画は成立し得るという事実を、日本映画界は真剣に受け止めた方がいい。

 

いしぶみ
学徒動員で広島の爆心地にいてその後全員死亡したという男子中学生たちの記録を、広島出身の綾瀬はるかさんが朗読。杉村春子さんご出演の往年のテレビ番組の焼き直しらしいけど、こういうやり方ならリメイクの意味もあるのかもしれない。

 

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
1950年代のハリウッドに吹き荒れた赤狩りの嵐を生き抜いた脚本家ダルトン・トランボの伝記。映画好きの人はこの辺りの映画史の確認として見といた方がいいと思う。

 

ルドルフとイッパイアッテナ
原作な有名な絵本だとのこと。可愛いけど甘すぎないバランスのよさがいい。日本のごく普通の風景の中の四季の移り変わりの描写にこだわっているのもいい。

 

太陽の蓋
福島の原発の話は、いろいろな人がいろいろな思惑からいろいろなことを言っていて、何が真実なのかさっぱり分からない。ただ分かるのは、マスコミはあまり頼りにならないということと、人類には原発を御しきれる能力はないということだけだ。

 

太陽のめざめ
不良少年の更正をサポートし続ける人々を描いたフランス映画。残念だけど親は選べねぇんだよ!寂しさを言い訳にしてないで早く大人になんなよ!とちょっとイラっとしたが、彼の周りの大人達もきっとそう思っていたに違いない?

 

ヤング・アダルト・ニューヨーク
振り返ってみると、“ちゃんとやっていけている人間として蔑まれることなく扱われたい” という欲求(というか見栄)はあるけれど実際そうではなかった時代というのが、確実に存在していたように思う。ベン・スティラー様はそういう役を演じさせると抜群に上手いよね。

 

疑惑のチャンピオン
癌から生還してツール・ド・フランス7連覇という偉業を成し遂げるも、悪質な組織的ドーピングが発覚して永久追放になったランス・アームストロングの実話の映画化。それでも称号が欲しい人々との永遠のいたちごっこ。スポーツ業界の闇も深い。

 

眼球の夢
いかにも60年代~70年代っぽい由緒正しいアングラ映画といった風情。そして思った以上に“眼球”三昧だった。意味は分からなくてもドンマイ!それがアングラというものだから。

 

シン・ゴジラ】については別項にちょっとだけ書かせて戴いたので、よろしければご参照下さい。

今回は他にこのような映画も見ました。

 

秘密 THE TOP SECRET】はあまり成功した出来とは言えず、特に少しでも原作を読んだことのある人は見るのをやめておいた方がいいと思います。

そもそも、マンガならではの表現ではないかと思われる薪警視正の透明感や純粋性を再現できるような人材は、トウが立った人間ばかりである芸能界には存在していないと思われ(芸能界なんてそうじゃなきゃ生き抜いていけないような世界だからしょうがない)、この時点で、この作品を実写化しようという発想自体がそもそも大間違いなのだと確信せざるを得ませんでした。露口絹子役のキャスティングもひどい。原作とかけ離れた容姿はともかく、このような発展途上の演技力ではお話になりません。他もミスキャストの嵐なのですが、せめて松坂桃李さんが青木捜査官をやればよかったんじゃないかと思ったりします。
それならばせめて原作のエピソードを粛々と映像化すればいいものを、何故、原作では無関係のエピソードを無理矢理つなぎ合わせ、ドヤ顔でこねくり回した挙げ句に焼け野原にしてしまうのか。原作をきちんと読み込んでいないことが丸わかりのラストシーンもひどかったけど、不要なキャラの追加も意味不明。私は大森南朋さんは大好きですが、彼はハードボイルドをやらせるとどうしようもなくクサくなることがあるという悪癖があることを、事前に指摘したスタッフは誰もいなかったのでしょうか。
おそらく、そもそもジャニーズありきでなければこの企画自体が成立していなかったのかもしれず、いろいろと難しい面があったのでしょうが、結果的に、『龍馬伝』【るろうに剣心】の大友啓史監督ほどの監督さんであってもハマらなければどうしようもないということを証明したような映画が出来上がってしまい、かえすがえすも残念に思います。

 

他に、中村誠監督の【チェブラーシカ 動物園へ行く】と【ちえりとチェリー】の併映も拝見させて戴きましたが、【チェブラーシカ…】の新作は、ちょっと可愛らしい方向に寄せすぎなのでは?と思いました。チェブラーシカは確かに可愛いですが、オリジナル作品群のあの得も言われぬ哀愁は、どうしても必須の要素なのではないかと思います。【ちえり…】の方は、チェリーくんの造形は好きだけど、ヒロインのキャラクターには共感できる要素が少なく、もっと検討がした方がいいのではないかと思います。