たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2016/11/15版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

永い言い訳
自分の傷だけに延々と囚われ続けて、新たな毒を周りに撒き散らし続ける困ったちゃん。わーものすげぇ近親憎悪。人間のこんな部分を欠陥とあげつらわず“人間なんてこんなものっすよ”と描く西川美和監督は、少なくとも私よりは相当寛容な人間だと思う。

 

湯を沸かすほどの熱い愛
チチを撮りに】の中野量太監督の新作。自らを燃やし尽くして残された者に生きる力を託すお母さんの造形が素晴らしい。今のこの時代に、今までにない切り口の家族の物語を創造できる才能を、日本映画界は全力でバックアップすべきだろう。

 

バースデーカード
早くに亡くなった母親が残してくれていた20歳までのバースデーカード。ベタと言えばベタなお話のはずなのに、お涙頂戴にもならず、必要なことはすべて語りつつも饒舌すぎない、過不足のない語り口が心地よい。𠮷田康弘監督、覚えとこ。

 

金メダル男
挫折に挫折を重ねた男が経験を積んでようやく自分の道らしきものを見つける、なんて筋書きのペーソスに溢れたトラジコメディが、若い男の子にウケる訳がない。この映画本来のターゲットであろう中高年層をもっと大事にしたマーケティングが必要だったんじゃないだろうか。

 

何者
就職活動って、企業群が求める画一的な規格に自分を合わせるふりをしなきゃならないところは昔と変わってないけれど、SNSというアルターエゴと付き合わなければいけない分、今の子達の方が大変な部分も多いかもしれないと思った。

 

フランコフォニア ルーヴルの記憶
ルーヴル美術館の所蔵品をナチスから守ったジャック・ジョジャール館長を中心に描いたルーブルの歴史。美術品って民族の魂の記憶装置なのね。ソクーロフ御大と初めて興味のベクトルが合ったみたいで、監督の作品の中では個人的には一番面白かった。

 

ハート・オブ・ドッグ 犬が教えてくれた人生の練習
ドキュメンタリーというよりは、独特の語り口で過去の記憶を辿るシネマエッセイ。ローリー・アンダーソンさんってお名前を久々に聞いたけど、ルー・リードさんと結婚してたって全然知らんかった自分のウラシマぶりに愕然とした。

 

手紙は憶えている
アトム・エゴヤン監督の新作。主人公の認知症のおじいさんが手紙で操られているというのは想像ついたんだけど、後からよくよく考えてみると、この方法には予測できない要素が多過ぎて、あまりにもリスキーなんじゃないだろうか。

 

彷徨える河
コロンビアの俊英シーロ・ゲーラ監督が、実在した白人探検家の手記を元に描いた先住民族の記憶。でも詳しい筋書きとか全然覚えておらず、えずくようにぞわぞわするモノクロの異世界に連れて行かれた印象しか残っていない。

 

 

今回は他に【秋の理由】【あなたを待っています】などの映画も見ました。【ダゲレオタイプの女】は、黒沢清監督が初めてフランスで撮った映画ということでちょっと期待していたのですが、今一つピンと来なかったかな。思うに、日本人である黒沢監督にはフランスの幽霊は描けないし、本来その必要もないんじゃないでしょうかね……。