おばさんシネマ

最近見た映画など。

『ユーリ!!! on ICE』が怒濤のラブ・ストーリーだった話(後編)


(注:今回は特にネタバレ成分および手前勝手な解釈成分が高いので、嫌な方は読まないで下さいね。)





勇利の様子が時々おかしくなるところはそれまでも度々見受けられたのですが、まさか最終話の直前でヴィクトルに別れを告げるとは……。
別れと言っても、自分は引退するからコーチをやめて現役に戻って下さい、ということなのですが、関係がこじれたまま離れてしまったらもうそれで終わりになってしまうかもしれないじゃないですかー !!

ゆ、勇利さん?ヴィクトルに事前に何の相談もなくいきなりそれはちょっとひどくない?……と思いましたが、それはこちらがヴィクトルの視点も含めた俯瞰的な立場から見ているからそう思うのであって、ヴィクトルの長年のファンでもあった勇利は、ヴィクトルが現役生活を休んで勇利のコーチをしていることに強い負い目があり(「僕のコーチでいることは競技者としてのヴィクトルを少しずつ殺しているのも同然だ」(11話))、いつかはヴィクトルを氷上に返さなければいけないと常々思い悩んでいたんですね。ヴィクトルを神にも等しい存在として崇めていた10年余年のも歳月は、恋人になった短い期間でそんなに簡単に修正できるようなものじゃなかったんですね。そう思うと、4話の「神様、どうか今だけ、ヴィクトルの時間を僕に下さい」というつぶやきが余計切ないですが……。
しかしだからって、「ヴィクトルも泣くんだ……」ってまたひどいことを。ヴィクトルさんを何だと思ってるんですか?あなたの部屋に長年貼ってたポスターじゃないんだからさ。

そんな勇利にヴィクトルは「自分は引退して、俺には競技を続けろだなんてよく言えるよね !? 」と激高しますが……ここからいきなりFS当日になってしまい、「フリーが終わったらそれぞれ自分で答えを出すと決めた」……っていきなり大人の別れ話みたいな結論になっちゃってるしー !! 実はFSの前に公式練習日が1日あったらしいのですが、彼らはこれに姿を現さなかったらしく、まるまる1日分の描写がサラッとすっ飛ばされているのです。そしてFS本番前の二人は完全に破局寸前って雰囲気じゃないですか。えーっ !! 一体何があったのよー !!
でも、滑走直前に交わした会話で二人は何かを理解し合ったらしく、抱き合って泣いている様子なのですが……正直、私はここまでの彼らの心情の流れがちゃんと理解できていなくて、謎だらけで、最終話が終わってからもずーーーっと悩み続けているのです。頼むよーーー公式様!ちょっとでいいから何か教えてくれよーーーーー !!!!!

……私に分かったのは、勇利がヴィクトルに教わったすべてを注ぎ込んだ最高の滑りを見せたということと、その勇利の思いを受け止めたヴィクトルがついに現役復帰を決意したこと、そして、滑っている最中の勇利が、ヴィクトルとずっと一緒にスケートを続けたいという本音を吐露していたことでした。

しかし、勇利に現役復帰を告げたヴィクトルは何とも言えない複雑な表情をしてたんですよね……。この時のヴィクトルは何を思っていたのでしょう……?

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

で、そろそろ、この物語のもう1人の中心人物であるユーリ・プリセツキーにご登場戴かなくてはなりません。

ユーリ・プリセツキーは、ジュニアの世界大会の優勝経験を経てシニアデビュー(大人の大会に出るようになること)目前の15歳のロシア人。ヴィクトルと同じコーチについている後輩です。家庭には恵まれていない様子で、彼に愛を注いでくれた肉親はおじいちゃんだけ。国からの援助を受けており、若いのに一家の大黒柱なので、勝利に対するハングリーさが半端ありません。

ユーリは、勇利に会えば睨みつけて恫喝し、勇利のことを豚・カツ丼・家畜などひどい呼び方で呼び、勇利も最初はユーリに恐れをなしていたのですが、……でも、そもそも最初のシーンで、試合にボロ負けして誰もいないトイレに一人籠もって泣いている勇利のところにどうしてユーリが来ているの?とネットで指摘している人が複数いて……あれ?

そう思って見直してみると、勇利に対するユーリの態度は、好きな子に悪態をつくしかできない、素直じゃない昔の小学生みたいにしか見えなくなってきました。そうしたら最終話で……やっぱりそうか!
そして、勇利の演技を好きなユーリの気持ちが、自分をもっと高めて勇利に勝ち、勇利に認めてもらいたいというモーティベーションに繋がっていたのだと、ほぼ確信するようになりました。

ということで、ユーリの言動を時系列で整理してみました。

1話:勇利のスケーティングに魅かれ、トイレまで追い掛けて行くけれど、メソメソ泣いてる勇利の情けない姿に思わずキレて喝を入れる。その後、バンケットダンスバトル(10話参照)。ダンスする勇利の写真を集められるだけ集めて携帯に大量保存していた。
2~3話:シニアデビューに兄弟子のヴィクトルの力が必要だと考えていたため、日本の勇利の実家にいるヴィクトルを追い掛けてくる。ヴィクトルの気まぐれ?で勇利とスケートで対決することになり、勝ったらヴィクトルを連れ帰る約束をするが、勇利の滑りと、それを見詰めるヴィクトルの様子を見て断念。ロシアに帰り、より強くなって自分の存在を認めさせたいと心に誓う。
4話:リリア先生がコーチに加入。黙々と修業する。
5話:日本国内大会でのヴィク勇の写真を見て携帯をぶん投げ、ミラ(同僚の女子選手)に「妬いてんの~?」とツッコまれる。
6~7話:中国大会のFSでのヴィク勇のキス映像が世界に流出。「ボルシチにしてやる」とキレる。
8話:ロシア大会には勇利もユーリも参加。勇利に対し、勝ってヴィクトルをロシアに残すと宣言(二人を引き離したかったの?)。キスクラでのあまりに親密なヴィク勇にキレて試合前の緊張を忘れる。
9話:ヴィクトル不在で調子の悪い勇利を思わず応援。(ヴィクトルが勇利をロシアに一人残して日本に帰ってしまうエピソードの周到さには唸りました!)試合後も様子のおかしかった勇利をあちこち探し回り、じいちゃん特製の大事なカツ丼ピロシキをプレゼント。この時の珍しく素直なユーリの可愛さったら!
10話:ヴィク勇の婚約を聞きあからさまに動揺。翌朝、海岸に一人佇むヴィクトルに背中から蹴りを入れ、「ヴィクトル・ニキフォロフは死んだ。あんなクソみたいな家畜の世話して何満足げな顔してんだ」「さっさといなくなれジジイ。家畜からもらった指輪はただのガラクタだ。俺が勝って飼い主がいかに無能か証明してみせる」と毒づく。
ここは文字通り、スケーターとしての意欲を失ったかに見えるヴィクトルに対する失望と捉えている人が多いようなのですが、私にはどうしても、勇利をかっさらってしまったヴィクトルへの嫉妬に見えてしまうんですよね……。
11話:SPでヴィクトルの記録を抜く。やったね!その後、キスクラのヴィク勇を蹴っ飛ばし、勇利の隣りに座るサーラ(美人の女子選手)との間にも割って入る。
最終話:勇利が引退するかもしれないことをヴィクトルから告げられ、ヴィクトルに力なくハグされる。(この時ヴィクトルは、ユーリに具体的に何かを告げた訳ではない、と個人的には思っているのですが……。)何かを決意したユーリは、全力の演技で勇利の引退を阻止しようと試みる。「金メダル取れたらやめんのか。ヴィクトルの点超えられたら他はどうでもいいのか。ふざけんな !! 俺をがっかりさせんな !! 豚に食わせる金メダルはねぇっ!」「今引退したら一生後悔させてやるよ。バーーカ!」
演技が終わった時、ユーリは感極まって泣いてしまうのですが、どんな感情が渦巻いていたんでしょうか……。

(……これは完全に個人の妄想レベルの話になってしまうかもしれませんが、私はこのユーリの姿に、少年の恋の終わりを見てしまったんです。)

勇利の滑りを見てヴィクトルが現役復帰を決意するのは予想してたけど、ユーリの滑りを見て勇利が引退を撤回するのは全く予想外でした。

でもここで少し残念に思うのが、時間の関係で、最終話におけるユーリの描写が限られたものになったこと。最終話は、全体的に尺を切り詰めに切り詰めている印象があったのですが、久保先生のお話によると、初回のネームが70Pだったのに対し、最終話のネームは120P(約1.7倍)くらいあったらしく、回想シーンなどを挟めばもう1話作ることが出来るくらいのボリュームがあったようなのです。しかし、テレビアニメの枠組の制約の中ではそんなに簡単に尺を増やしたりできない。そうなると、まずは勇利とヴィクトルの話を中心に描かざるを得ず、その結果、ユーリの描写があおりを受けてしまったのではないかと思われます。実際、本作のスケート曲を集めたサントラにはユーリのエキシビションの曲があるのに、本編には登場しませんでしたよね。

10話のラストにびっくりするようなエピソードが出てきて、これまで信じられてきた勇利とヴィクトルの関係が反転してしまい、もう1度1話から見直さざるを得なくなってしまったように、最終話でユーリが最初から勇利の滑りに魅かれていたことが明らかになったことで、ユーリと勇利の関係も反転し、更にもう1度1話から見直してみたくなってしまう、という驚くほどに周到な仕掛けと伏線が張り巡らされたシナリオだったことに気づいた時、私は身震いしてしまいました。
だからこそ、最終話でユーリの心情をもっとじっくり描くことができていれば、勇利の引退をユーリが最後に覆したというクライマックスと相まって、この話が二人のユーリとヴィクトルの三重奏の物語としてもっと完成されたものになっていたのではないかと思われ、それが完全には果たせなかったと見受けられるところが、少しだけ残念に感じられるのです。

もちろん、これは監督の手腕等々の問題などではなく、完全に時間的制約の問題です。むしろこれだけ中身の詰まった最終話をよくここまでまとめ上げて下さったものだと、山本沙代監督を始めとするスタッフの皆様には心からの感嘆と感謝と畏敬の念しかありません。

それでも、やっぱり最終話に今一つ食い足りなさを感じているのも事実なんですよね~。だから、2期があるなら見たいけどその前に、10話あたりから最終話までのグランプリファイナルの完全版を映画か何かにしてもらえないものだろうかと、切に願ってやみません。あのFS前の空白の1日や、ユーリの心情や、試合後の表彰式からエキシビションに至るまでの諸々のエピソードなどをもう少しじっくり描いて欲しいし、我儘を言えば、エキシビションだって、本当はもっとたっぷり見たかったんです……!

と勝手な願望を書き散らしておいて、やっと話も尽きてきたのでそろそろ本編を終わりにしたいと思います。この作品に携わって下さったすべてのスタッフの皆様と声優の皆様、この作品を全力でこの世に送り出して下さって本当にどうもありがとうございました!

最後まで読んで下さった方がもしいたら。こんな駄文に長々とお付き合い戴き本当にどうもすみません。少しは気が済んだような気がします。どうもありがとうございました。