最近見た映画 (2018/08/08版)
最近、こんな映画を見ました。
【万引き家族】
最高の演技陣が最高の演出で形にする日本のアナザーサイド。日本映画の最高到達点の一つになって当然。是枝裕和監督がいつか世界最高峰の映画監督の一人に列せられる日が来るなんて、そんなこと昔から分かっていたさぁ!
【菊とギロチン】
瀬々敬久監督の新たな境地。実効性の無い極端な机上の空論ばかりを夢想するアナーキスト達には、周囲の圧力に屈すること無く自由を渇望し自らの力で掴み取ろうと足掻く女力士達が眩しかったのではあるまいか。今も昔も、日本の権力構造がろくなもんじゃないことは変わっちゃいないさ。
【パンク侍、斬られて候】
荒唐無稽な町田康さんの原作をクドカンが独特のリズムで脚本化し、石井岳龍監督が勢いのまま形にする。破茶滅茶な役柄に嬉々として全力で取り組むイカれた名優の皆様が麗しく、その中で座長を張るゴーアヤノが放出するエネルギーが凄まじい。
【Vision】
美しい自然の中に人間の身体性が存在するという現象を空間ごと描出する河瀬直美監督の離れ業。今のこの時代に、いわゆる“コンテンツビジネス”とは全く違うベクトルの映画がまだ存在しうることを証明してみせたなんて驚異的だ。
【空飛ぶタイヤ】
このストーリーをよく2時間にまとめたものだと、林民夫先生の脚本力に感動。豪華なキャスト陣を、登場時間の少ない役にも贅沢に配しているのも効果的。その中心に据えられている長瀬智也さんの存在感は正に画竜点睛。
【ザ・ビッグハウス】
ミシガン大学に一年間客員教授として招かれた想田和弘監督が、同大の先生や学生の皆さんと撮ったアメフトの大学対抗戦の様子。それ自体が巨大な生命体のようなイベントは何もかもが桁違いで、アメリカという国のエネルギーの根源を見せつけられている気がする。
【北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ】
スロベニアの実験音楽のバンド、ライバッハの北朝鮮でのコンサート。単なる見学の記録とは一線を画し、彼等との仕事上の折衝のままならなさを活写しているのが新鮮。これまで見た北朝鮮関係のドキュメンタリーでは【金日成のパレード】以来の白眉かも。
【30年後の同窓会】
リチャード・リンクレイター監督の新作。イラク戦争で戦死した息子の遺体を引き取るために旅する元ベトナム帰還兵と、昔の海軍での仲間たちの姿に、アメリカの違った側面が映り込む。“同窓会”なんて生ぬるく間違った邦題のせいでうっかり見逃すところだったじゃないのー !!
【バトル・オブ・ザ・セクシーズ】
セクスィー部長、とかではなくて性別間の戦いという意味。女は××だから不利益な立場を我慢させられるのは当然、という決めつけによる差別やハラスメントは、昔からあって今もなお存在し続けている。差別など無いという皆さん。私もできればそんなふうに無邪気に生きてみたかった。
【焼肉ドラゴン】
劇作家・舞台演出家の鄭義信さんによる自らの舞台作品の映画化で、日本の高度成長期を生きるある在日コリアン一家を丹念に描写する。一家の父母を演じる韓国人キャストのキム・サンホさんとイ・ジョンウンさんが特に素晴らしい。
【榎田貿易堂】
群馬県渋川市出身の飯塚健監督と渋川清彦さんがタッグを組んだ作品。渋川さん・森岡龍さん・伊藤沙莉さん・滝藤賢一さん・余貴美子さんのアンサンブルキャストが抜群!テレ東の深夜ドラマ枠とかでシリーズ化してくれないかなー。
【女と男の観覧車】
あまりに辛辣で救いが無い話を創る時のウディ・アレン監督って、おそらく私生活があまり上手くいってない……。しかし、自分を特別だと思い込みたいヒロインの醜さの描写が容赦ないのに較べて、その浮気相手の男の頭の軽さには随分寛容なんじゃない?
【子どもが教えてくれたこと】
重篤な病気を抱える子供達を描いたフランスのドキュメンタリー。自分の病気と冷静に向き合いながら今を精一杯生きようとしている子供達の姿はあまりに尊く、監督もかつて病気で子供を亡くされたのだと聞いてあまりに切なかった。
【ガザの美容室】
パレスチナ自治区のガザにある女性達の集う美容室は、苦難ばかりが待っている外の世界からほんの一時だけ逃れることができるアジール。パレスチナ系を中心とする女優の皆さん一人一人の力強さが本当に素晴らしい。
【返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す】
沖縄の日本返還時にアメリカとの交渉を担当した外交官が主人公。実話のドラマ化にありがちな冗長さとカタルシスの弱さは否めないけれど、外交には信念に基づく行動がいかに必要かということが丹念に描かれているのに感銘を受けた。
前回からもの凄く間が開いてしまってすみません……。言い訳をさせてもらうと、7月中に1週間ほどやむにやまれぬリフォーム工事が入り、その準備と対応と後片づけで疲れ果ててしまったのでした……。いや、単にやる気がだだ滑りしているだけですな。まぁそういう時期もあるかなぁ、と自分に甘くて重ね重ねすみません……。
今回の上位5作品は、今年の個人的ベスト10に入ってきそうな素晴らしい作品ばかりでした。夏休みに向けて公開された映画は次回に回させてください。東京医科大学は一回潰れてしまえ!まともな点数で入った学生の皆さんには申し訳ないけれど。
それではまたー。