たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2019/03/12版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

洗骨
ガレッジセールのゴリさんこと照屋年之監督による、沖縄の離島に残る珍しい埋葬の風習をモチーフにした物語。軽すぎないけど重すぎない人生の機微の描き方と、クスリと笑える合いの手のようなシーンのバランスが絶妙。監督のお笑い芸人としての感覚がいい意味で活きていると思う。

 

ゴッズ・オウン・カントリー
イギリスの寒々しい田舎の閉塞的な農場で暮らす男性が、とある男性と出会って見つけた愛と希望。自分の人生を変えてくれるきっかけが向こうから訪れてくれるなんてそうそうないラッキーなことなんだから、うっかり××なんてしてないで大事にしなさいよー!と思った。

 

バーニング
村上春樹氏の原作を【ペパーミント・キャンディー】【オアシス】のイ・チャンドン監督が映画化。筋立ては確かに村上春樹的なのに、見事に韓国映画に換骨奪胎されている。自分が韓国映画と問われてパッと思い浮かぶのは正にこんな感じだなぁ、と懐かしくなった。

 

あの日のオルガン
第二次大戦中に東京から未就学児を集団疎開させた保母さん達の実話の映画化。平松恵美子監督は近年の山田洋次監督作品には欠かせない右腕的存在。登場人物一人一人の心の動きを丁寧かつ自然に描こうとする作風が好きだなぁと思う。

 

女王陛下のお気に入り
ギリシャ出身の俊英ヨルゴス・ランティモス監督が描くイギリスの宮廷絵巻。名誉革命ウィリアム3世の次に即位したのがアン女王。歴史って割と個人的なネチネチした人間関係で動くけど、イギリス王室は特にその印象が強いような気がする。

 

半世界
阪本順治監督が描くアラフォー男性達の逡巡。稲垣吾郎さんが演じた炭焼き職人の役は、渋川清彦さんがやった方が似合うんじゃないかと一瞬思ったけど、よくよく考えるとそれでは既視感がありすぎ。長谷川博己さんの演じる元自衛隊員も、最初感じた違和感が段々面白くなってくる。そんな新鮮さに不思議な魅力がある。

 

金子文子と朴烈(パクヨル)
関東大震災後、朝鮮人虐殺の言い訳として不穏分子に仕立てられ大逆罪に問われた朝鮮人男性と日本人女性の物語。アナーキストの話と言うよりは、理不尽な状況に真正面から向き合おうとした者達の鮮烈なラブストーリーに映る。金子文子さんは、小さな頃に朝鮮在住の親戚に引き取られて過酷な労働をさせられたそうで、日本在住経験のあるチェ・ヒソさんが演じるのはぴったりかもしれない。

 

ねことじいちゃん
NHK『世界ネコ歩き』で有名な動物写真家・岩合光昭氏のドキュメンタリー……ではなく、ネコ漫画の実写映画化。主演の立川志の輔さんのいい味が出まくりの味わい深い一編だった。あのような離島で若い人が診療所やらカフェやらを運営して採算的にやっていけるのか、という疑問点は置いといて。

 

ナポリの隣人
偏屈なじいさんが、隣家に越してきた一家の女性と心を通わせるも、予期せぬ悲劇が。その時、じいさんとの関係が冷え切っていた娘はどうするか。娘と親との関係を描く映画には今でも心を刺激されてしまうんだなぁ。それはイタリア映画でもどこの国の映画でも変わりなく。

 

赤い雪 RED SNOW
本作が長編デビューになる甲斐さやか監督作。静かに降り続ける雪が心に残るが、外側から観察を続けるようなクールな描き方ゆえ、誰の視点にも寄り添えない気がする。それは欠点ではないだろうが、その分、訴求力が落ちることは確かだ。

 

ナディアの誓い
ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんの活動を描いたドキュメンタリー。彼女は、家族や同じような立場の人々に救いの手が届くことを祈りながら、ISから受けた死ぬより辛いかもしれない過酷な体験を人前で話し続けた。そうして自ら証言者になることで実際にたくさんのことを動かしたのは本当に凄い。その勇気に涙が出そうになる。

 

あなたはまだ帰ってこない
ナチス占領下のパリで夫が強制収容所から帰るのを待ち続けた体験を綴ったマルグリット・デュラスの『苦悩』の映画化。マルグリット・デュラス関連の作品を見れば見るほど、彼女がどういう人なのか、フランス人の言う愛って何なのか、どんどん分からなくなってくるような……。

 

アリータ:バトル・エンジェル
木城ゆきと氏のコミックス『銃夢』の映画化というジェームズ・キャメロン監督念願の企画を、ロバート・ロドリゲス監督が実現。CGと実写の見事な融合で、ストーリーも普通に面白かったけど、この話のどの辺りがジェームズ・キャメロン監督の琴線に触れたのか、監督ご自身に聞いてみたいところ。

 

山(モンテ)
イラン出身のアミール・ナデリ監督による寓話的な物語。一家は虐げられた環境を変えるため山を穿ち続ける。ラストシーンの鮮やかな色彩が総てを物語っている。

 

 

【洗骨】の照屋年之監督ことガレッジセールのゴリさんは、祖父が照屋林助さん、いとこが照屋林賢さんという、知ってる人にとっては超メジャーな芸能一家のご出身。照屋林賢さんはかの『りんけんバンド』のリーダーで、その父の照屋林助さんは三線(さんしん)を使った漫談で第二次世界大戦後の沖縄のエンターテイメント界を牽引した人物。1990年前後の沖縄ブームの頃に【ウンタマギルー】や【パイナップル・ツアーズ】などの映画で軽妙な弾き語りを披露していた姿が思い出されます。「銭雨(じんあみ)ど~い、銭雨どい、銭の雨降る暮らさりる、はい!」と今でもたまに口ずさんでしまうことがありますもんね。芸能の力って凄いです。

 

 

ところで、アルフォンソ・キュアロン監督の【ROMA/ローマ】が急遽劇場公開になりましたね。興行の方法はさておき、とりあえず映画館で見ることができてよかった!感想は来月に回しますが、この映画はいろんな意味で後々の試金石になりそうですね。

 

 

2019/03/19追記:

この記事を投稿した12日の夜はまだ比較的平和だった……。

ピエール瀧さんの件は衝撃的すぎて一言で言い表せません。垂れ流し状態になってしまう地上波では放送中止や撮り流し等の措置はやむを得ないでしょうが、各自が選べる音源や過去の出演作などの配信停止や回収などはやり過ぎだと思います。そして、氏に最も必要なのは、マスコミのバッシングではなく依存症の治療だと思われます。

【翔んで埼玉】の記事は当面削除します。場合によっては更なるボイコットも考えています。