最近見た映画 (2020/03/23版)
最近、こんな映画を見ました。
【Red】
かつて不倫をしていた男性との関係が再燃する女性を描いた小説を三島有紀子監督が映画化。いくら物分かりがいい可愛い妻を演じることに疲れたからって、こんな独占欲丸出しのカッコつけ自己中男のどこがいいんだ?と思ったが、そんな彼の弱さや狡さもひっくるめて魅かれてしまったのならもう仕方ないんだろう……。そんな良し悪しだけでは量れない人間の在りようが驚くほど精密に描写されているのが圧巻。夏帆さんと妻夫木聡さんの深淵をえぐり出すような演技や、脇を固める柄本佑さんや片岡礼子さんの佇まいが素晴らしかった。
【名もなき生涯】
ナチス政権下のオーストリア。良心的兵役拒否により投獄された男性とその妻を描くテレンス・マリック監督作。どんな目に遭っても信念を曲げない夫と、狭い共同体の中でエグい村八分に遭いながらも夫を信じ愛し続ける妻の姿が、ヨーロッパの農村の美しい風景と相まって荘厳な印象を残す。監督のこれまでの作品の中で最も好きな1本になったかもしれない。
【影裏(えいり)】
転勤先の岩手県盛岡市に住む男性が、友人となった人物の知らない側面に翻弄される大友啓史監督作。ゴーアヤノが松龍に片想いしてその二面性に思い悩む話だと考えれば凄くシンプルなんじゃなかろうか。最近は大友監督の作品からすっかり遠ざかっていたが、やはり見るべき作品を創るポテンシャルを持っている方なのだなぁと再認識した。
【娘は戦場で生まれた】
壊滅に追い込まれていくシリアのアレッポの人々をジャーナリスト志望の女性が撮影したドキュメンタリー。他のシリア関連のドキュメンタリーと大きく違っているのは、監督がアレッポ最後の病院の医師と結婚して子供を産むこと。こんな絶望的な状況の中でも人間は人間としての営みを続けようとするのか、という不思議な感慨があった。
【静かな雨】
【わたしは光をにぎっている】の中川龍太郎監督作。記憶障害系のストーリーには大概「もうええわ」と思ってしまうが、両思いで後は告白するだけというタイミングで彼女に記憶障害が起こり、毎朝イチから説明し直さなければならなくなってしまった彼氏が苦悩する、という筋立ては技ありだと思った。仲野太賀さん演じるこの彼氏みたいな男性、凄く好きだなぁ。中川監督のような作風は商業ベースには乗りにくいと思うけど、今後の作品も期待しています!
【スキャンダル】
2016年にFOXニュースの最高経営責任者ロジャー・エイルズがセクハラ問題で辞任した事件の映画化。欧米でも未だに度々セクハラ問題が話題になるのは、社会の中にまだそういうものが存在すればこそだ、と改めて思った。そうした国々より遥かに後塵を拝するジェンダーギャップ指数世界121位の日本では、道のりは更に遠そうである。
【ジュディ 虹の彼方に】
【オズの魔法使】で大スターとなったジュディ・ガーランドの後半生にスポットを当てた映画。レネー・ゼルウィガーさんの熱演が凄くて、彼女が演じていることを途中で忘れてしまうほど。ただ、これほど波乱に満ちた生涯ならもっともっとドラマチックかつダイナミックなストーリーを構築できたのではないか、という不満も。脚本が良ければ【エディット・ピアフ 愛の讃歌】に比肩されるような名作になっていたかもしれないのに……。
【グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇】
太宰治の遺作を元にしたケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の舞台を、成島出監督が映画化。女性達に対して優柔不断かつ無責任が過ぎる大泉洋さん演じる主人公に、太宰治もこんな野郎だったのかなとウゲーっとなる。これに対し、主人公の偽婚約者という役柄の小池栄子さんの破天荒なパワフルさは痛快。しかし彼女はクセのある役柄ばかりが当たり役になってしまうよなぁ……少し勿体ないような。
【初恋】
窪田正孝さんがヤクザとチャイニーズマフィアと悪徳刑事の争いに巻き込まれるボクサーを演じた三池崇史監督作。三池監督の描くヤーさんにはある種クラシックな型が出来ており、懐かしさに近いものを抱く反面、古めかしさも感じてしまう。最近のヤクザってもうこんなじゃないんじゃないかなぁ……よう知らんけど。酷い目に遭わされるがままのヒロインの女の子もどうも魅力が感じられなかったのに対し、愛のためにブチ切れ自ら行動を起こすベッキーさんは無茶苦茶よかった。
【星屑の町】
売れないムード歌謡グループを描いた25年続く舞台シリーズを、のんさんをヒロインに迎えて映画化。チームの息はピッタリだけど、時々オジさん達のノリについていけないし、のんさんのキャラ設定にもところどころブレがあるような。それでも銀幕ののんさんはやはり輝いていて、彼女を起用した製作陣には感謝するばかり。お話を彩る昭和歌謡の数々も楽しい。
今回は他にこんな映画も見ました。
【屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ】は、ファティ・アキン監督が故郷のハンブルクの街に実在した殺人鬼の話を映画化した一編。彼に感情移入する必要は無い、と主人公の内面描写をバッサリ切っているのですが、その結果、奇怪な人物が起こした残虐な事件、というエッセンスだけを煮しめたような作品になっており、これが果たしてよかったのかどうか。
【ジョン・F・ドノヴァンの死と生】は、グザヴィエ・ドラン監督が初めて英語で撮った作品。(今までフランス語で撮っていたので監督はてっきりフランス人なのだと思っていたらカナダ人でした……しまった。)子供の頃にレオナルド・ディカプリオにファンレターを書いたという経験を基に、少年とスターの文通という物語を発想したのはいいと思うのですが、最初に思いついた幾つかのシーンのイメージを整合性のある物語に構築できなかったのではないか、という印象を受けました。
【ミッドサマー】は、事前に話を聞く限り多分好きではないだろうなぁと思うので未見です。そもそもホラー嫌いというのもあるけれど、気持ちの悪い何事かが起こる場所のイメージを勝手に他の国に押し付けんなよ、とか思ってしまうんですよね。
●映画館にはデフォルトで換気の設備が義務付けられている、●そもそも上映中は声を出さない、●そもそも多くの劇場では収容人数が多くない上に、一部の劇場では座席を1席ずつ空けて販売している、などの要件により、多くの映画館は「密閉空間/近距離での会話や発声がある/手の届く距離に多くの人がいる」というクラスター発生リスクの三条件を何とか回避して上映を続けています。しかしこれもいつまで続くことか。
未だにオリンピックを開くとか馬鹿を言っている政府自民党の無能ぶりと出鱈目ぶりと腐敗ぶりのため、日本は落ちるところまで落ちることでしょう。これまで政府と馴れ合って来たマスコミも同罪と考えます。言いたいことはありすぎるけれど、ここは政治アカウントじゃないのでこの辺で。
3月・4月はそもそも見たい映画が少なかったのに加え、我が家にも後期高齢者がいるので映画館に行くのも最低限にしたいため、これからしばらくは低浮上になります。皆様、どうぞくれぐれもご自愛下さい。地獄を生き延びた先できっとお会いできますように。