たそがれシネマ

最近見た映画など。

この半年何を考えていたのかの備忘録

 

やくたいもないことをだらだら書いてしまった。どうもすみません。まぁ誰も読んでいないだろうからいいか。これから何年か経った時に、あの頃何を考えていたのかと少しばかり思い出せるようなものを、自分のためにちょっと書いておきたかったのだ。

 

 

脚本家の野木亜紀子さんがFireTVなる装置を薦めているのをツイッターで見かけ、ゴールデンウィークにどこにも行けない家族に映画でも見て気を紛らわせてもらおうという思惑もあって我が家でも導入した。それが自分の生活をここまで変えることになるとは思いもしなかった。

 

Covid19のパンデミックのため様々なことを控える生活を送らざるを得なかったここ半年。もともと在宅だった仕事も激減する中、日々ツイッターばかり眺めていたと思っていたけれど、FireTVで見た作品のログを見返してみると、映画やアニメシリーズなど、思った以上に大量の作品を見ていて、我ながら驚いた。

 

Amazon PrimeNetflix、U-NEXTなどの動画配信サービスは知っていたし少し利用したこともあったのだが、携帯やタブレットの小さい画面を見続けるのはどうにも疲れるし性に合わない。PCはいつも仕事や他の作業に使っているし、画面のサイズや距離感的に動画を見たりするのには不向きだ。その点テレビは、最初から視聴のためだけに準備されている機材なので、圧倒的に見やすい。勿論これは自分自身がテレビに慣れ親しんできた世代だからであり、若い人の環境や感覚は違うのかもしれないが、とにかく自分にとっては、配信された映画やドラマやアニメをテレビの画面で見ることができるようになるというのは大変ありがたいことだった。

 

近所のレンタルビデオ屋に行っても、目指すDVDやBlu-ray(もうとっくにビデオではない)が無かったりすることがままあって、自然に足が遠のいていた。でも配信サービスなら、わざわざ店に足を運んだり返却日をさほど気に留めたりしなくても、作品が入荷されてさえいればいつでも見ることができる。なんて便利なんだーーーー!!!と初めて文明に触れた人類のような心持ちになる。なるほど、世の中が一挙に配信に流れているというのがよく分かる。レンタルビデオ屋という業態はもうすぐ過去のものになってしまうのかもしれないな。映画館とはある程度棲み分けができる可能性があるかもしれないが(もしかすると、映画視聴という習慣が常態化することによって、逆に少しぐらいは映画館への環流を期待できるかもしれないが)、観客の高齢化と言う問題もあることだし、いずれにしろ厳しい時代がやって来るに違いない。

 

閑話休題。こういう社会情勢で映画公開から配信への移行のタイミングがどんどん早まっているので、それなら無理に映画館で見なくても、配信を待っていればいいのかもしれない。むしろ今後は、見るかどうか決めかねていたような作品でも、気軽に見ることができるようになるのではないか。多少マニアックな作品を見る機会はもしかしたら減るかもしれないが、そうした作品と出会えるかどうかはタイミングと運の問題だと、先日考えを改めたばかりだし、むしろ、配信でしか見ることができない作品の中にこそ素晴らしい作品を見つけることができるかもしれない。それならば、是が非でも映画館で見なくては!と心を動かされる作品以外は、配信サービスの海の中で出会える可能性に賭ければ、それで事足りるんじゃないだろうか。

 

……などという戯れ言を頭の中で繰り返し考えるようになっていたのだが、毎週複数の映画を映画館で見るという長年続けていた習慣を変えなければいけないのかもしれないのは、何もコロナ禍だけが原因ではなかった。

 

今年の初めにこんな所信表明を書いていたことにふと気がついた。
「資金的な問題を含めた様々な条件から、今後も映画を見続けることができるのかどうかよく分かりません。ある時期以降の自分にとって映画は世界と繋がる手段でしたが、そういうことも含めて、自分の中の様々なルーティンをもう一度洗い直してみなければならない時期なのかもしれないなぁ、と思ったりもします。」……Oh my goodness !!!
有り体に言って金がない!アベノミクスでサラリーマンの年収が100万円くらい下がったという話をどこかで聞いたが、私はサラリーマンではないけれど、本当に年収が100万円くらい下がっている……。しかも、もともと500万円くらいもらっていて100万円下がったなどというような悠長な話ではなく、もともとカツカツだった年収がもっとカツカツになっているのだ。そんな中、いろいろ胡麻化しながら無理矢理以前の習慣を続けていたのが、限界に達しつつあったのだ。
確かにコロナで収入が劇的に減った。でもそれは、コロナ以前からとっくに始まっていたのだ。

 

そもそも、是が非でも見たいと思うような新作映画の数が減っていたということもある。そもそも日本の映画界はどちらかと言えば若い人向けに市場が構成されている上、長年いろんな映画を見てきたので、かなりの数の映画は見なくても大体手の内が分かるようになってしまった。そんな中、気がつけば、日本では若手俳優の売り込みを目的とした低予算で中身の薄い映画ばかりが量産されるようになっており(←現場で作る人や出る人ではなく企画する人の問題である)、海外からの買い付けも予算重視になっていて(←賞を獲ったりするような評価の高い映画は値段が相対的に高くなる)、自分好みの中規模・小規模な力作にお目に掛かる機会自体が、おそらく以前よりかなり少なくなっている。

 

きっとコロナというのは単なるきっかけで、私にとっては、主に映画館で映画を見る生活から、主に配信で映画を見る生活にシフトチェンジするべきタイミングがやって来ていたのだろう。

 

しかしまぁ、こんなことは誰でもやってることなのだ。それを自分も始めるというだけのことなのだ。

 

 

そんなふうに考え始める中、映画館で映画を見るということを部分的に再開したのは、大林宣彦監督の遺作【海辺の映画館―キネマの玉手箱】だけはどうしても映画館で見たい、という思いからだった。

 

映画館での映画鑑賞を部分的に再開するにあたって、自分なりのルールを設定した。すぐ行き来できる距離で半同居している親が後期高齢者なので、余計な感染のリスクは負いたくないし、過度の心配も掛けたくない。(どうやらこの辺りの感覚は、高齢者や子供と同居しているかどうかで人によりかなり違っているらしい。)なので、なるべく我が千葉県から越境せず、最大限行くとしても銀座までで、新宿や渋谷には足を踏み入れない。なるべく混んでいない映画館や時間帯を狙い、あまりに混んでいるようならその日は断念する。こうなると都内のみで上映される単館系の映画は難しくなるが、致し方ない。さっきも書いたが、映画とは出会いのものだ。もしご縁があればきっとまたどこかで出会うことができるだろう。
そうだ、もう一つルールがあった。配信を待てそうな映画(そしてそのまま出会えなかったとしても後悔が薄いであろう映画)は極力待つということ。

 

でもやっぱり映画館はいいよね。家だとどうしても「ながら見」になってしまいがちだが、映画館の暗闇の中では、映画だけに向き合って身を委ねることができる。私はあの空間にいる時間が好きなのだ。

 

しかしこうした映画館詣(もうで)も、館内で1席ずつ空けて隣りの人との距離を確保するという座席の販売方法が順守されていたから、ある程度自分を納得させて再開することができたのだ。が、最近になって、これでは利益を出しにくいからと、多くの映画館で週末だけは全席の販売を再開するという謎の方策が取られるようになってしまった……。安全のために取られているはずの処置が土日だけは必要無くなるなんて、一体どういう理屈なの !? 誰が音頭を取ったのか知らないが、欺瞞もいいところでは。映画業界も苦しいのだということは理解したいとは思うけど、映画業界が観客の命や健康と、自分達の利益を天秤にかけて、前者を軽んじるという結論を出したということは、今後一生忘れない。

 

映画業界にはもう一つ不満に感じていることがあった。映画館が営業を再開した際、大作映画と呼ばれる映画が軒並み公開延期になる煽りを受けてか、中規模・小規模な作品群が、大した宣伝も行われないままに、まるで投げ売りされるみたいに矢継ぎ早に公開されていたことだ。
もしかすると製作会社の側でも、一刻も早く公開しないことには資金繰りが苦しい等の状況があったのかもしれない。が、それにしてもあの状態は、傍目にはあまりにも愛が感じられなかった。
映画業界としては、大作映画がなければやっていけないというのは偽らざる本音だろう。しかし、中規模・小規模の映画を大切にすることなく、いきなり大作映画だけを世に出すことができると思っているのだろうか。日本の学術の世界と一緒だよ。裾野を無くしていきなり高い頂(いただき)だけを作りたいと思っても無理なんだということが分からない人が、映画業界にも一定数存在しているような気がする。

 

あーもう一つあった。いくら映画館に来い来いと言われても、金がないから前みたいに行けないんだよ……。映画業界の中の人は、日本人の実質の平均年収が昔よりずっと減ってみんなカツカツの中で生活していて、昔より映画に割くことができる金額も減っているのだという事実と、もっと真正面から真剣に向き合うべきなんじゃないだろうか。アレだな、映画業界を動かす中心にいるような人達はみんな金持ちのじーさんばっかなんだろうな。だから、私みたいなパンピーの気持ちを逆撫でして反感すら覚えさせていることに気づかないんだろうな……。

 

 

ということで、個人的に、これまでの映画館通いの生活を、配信視聴を中心にした生活に鞍替えさせることになったのだが、長年の習慣を根本的に変えるのは結構大変かもしれない。まず、複数ある配信会社にどんな映画が入っているのかという情報を集めるのがなかなか難しい。各会社でフォーマットはばらばらだし、あまり分かりやすい形になってない。それでも新入荷作品はまだ何とかなるかもしれないが、旧作となるとお手上げで、思いついた作品を片っ端から検索に掛けてみることくらいしかできない。もっと体系立った合理的な情報取得の方法はないものか?まぁ現在は過渡期なので、こうした環境もそのうち整えられていくのかもしれないが。それから、自分の映画サイトも手直ししなくちゃならないだろう。まぁそれは追々やっていけばいいか。

 

そう、所詮私の考えていることは、映画とどう向き合っていくかということばかりだったのだ。