たそがれシネマ

最近見た映画など。

もっかのベスト5!(2014/11/29)

 

東京近辺で上映中の映画のうち、現在オススメするベスト10+αは以下の通りです。

 

1.【インターステラー
((滅び行く環境+科学の可能性と限界)×家族愛+α。知り合いの全員に勧めて回りたい、おそらく今年のNo.1。)

 

2.【0.5ミリ
(安藤桃子監督が才能の片鱗をさっくり見せつけた快作。安藤サクラさんとの実力派姉妹コンビはこれからも期待できそう。)

 

2.【滝を見にいく
(おばさん最強!おじさん7人ではどうにもならないが、おばさん7人であればどうとでもなるような気がする。)

 

4.【ショート・ターム
(様々な問題を抱える子供達を短期間預かるケア施設の物語。押しつけがましくないのに説得力がある描写が素晴らしい。)

 

5.【馬々と人間たち
アイスランドには人と馬が溶け合う深い馬文化があった。同じ馬好きを自認するアメリカの馬映画とはエラい違いだな~。)

 

6.【6才のボクが、大人になるまで。
(アメリカの子供の典型的な成長の道筋。12年間同じメンバーで撮るのも、それが映画としてちゃんと成立してるのも凄い。)

 

7.【日々ロック
(ロックに感電したそのエネルギーだけで突っ走る勢いに、何か分からないが感動させられてしまったような気がする。)

 

7.【福福荘の福ちゃん
(主人公の愚直なまでの純粋さを清潔に表現するために、女性である大島美幸さんが抜擢された意味があったと思う。)

 

9.【紙の月
(何かの境界線の崩壊。名作と言っていい出来だと思うけど、頭から終わりまで正視するのが辛すぎだった……。)

 

10.【西遊記 はじまりのはじまり
(ど定番の『西遊記』のイメージをいい意味で豪快に裏切ってくれる。続編も期待したいけど、スー・チーさんを馬にするのはどうですか?)

 

10.【祝宴!シェフ
(チェン・ユーシュン監督の新作が観られるなんて!昔のテイストそのままに、むしろパワーアップしてる感じで嬉しかった。)

 

10.【刺さった男】【スガラムルディの魔女
(片や社会派ブラックコメディ、片や怒濤のスラップスティックアレックス・デ・ラ・イグレシア監督のエッセンスをご堪能戴きたい。)

 

今回はめぼしい公開作があまりにも大量にあったため、少し変則的ですがこのようなチャートにしてみました。
この中で私が特に注目しているのは、2位に挙げた【滝を見にいく】です。おばちゃん7人が野山で遭難するだけの話がなんでこんなに面白いのか。謎の殺人ゲームが繰り広げられたり、死んだ人が見守っていたり、戦争やタイムスリップが無闇に起こったり、青春ラブストーリーだったりしなくても映画は創れるのだということを、日本映画界は今一度真剣に考えてみた方がいいんじゃないかと思います。

 

今回は他にこのような作品もありました:

 

ベテラン作家の4作:

ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2】:ラース・フォン・トリアー監督作。これは自らの“女性恐怖症”に対するリハビリなんでしょうかね?強い印象は残るけど、例によって人に勧めていいものかは難しいところです。

天才スピヴェット】:ジャン=ピエール・ジュネ監督作。3Dは嫌いなんで2Dで見ました。悪くはないんだけど、手堅くまとまってしまった感は否めないかもしれません。

マダム・マロリーと魔法のスパイス】:ラッセ・ハルストレム監督作。原題は【The Hundred-foot Journey】でマロリーさんは主役じゃないんで、この邦題はよくないと思います。

デビルズ・ノット】:アトム・エゴヤン監督作。実在の冤罪事件を扱っているらしいんだけど、そこに衝撃を受けなかったので、個人的には印象が弱かったです。

 

俊英の2作:

トム・アット・ザ・ファーム】:カナダのグザヴィエ・ドラン監督作。意味が分かったか?と言われると正直怪しいけど、全編を覆う不穏な緊張感は凄いと思いました。

オオカミは嘘をつく】:タランティーノ監督が絶賛したというイスラエル映画。女の子が惨殺された事件の話ということで心の中でどうしても【藁の盾】と較べてしまっており、そうするとどうしてもちょっと物足りない印象が残ってしまいました。

 

バイオレンスアクション2作:

25 NIJYU-GO】:東映Vシネマ25周年記念作。だったら哀川翔先生だけでなく、竹内力先生とのダブル主演にすべきだったんじゃないでしょうか。

ザ・レイド GOKUDO】:アクションがもの凄いインドネシア映画の続編。日本人キャストの出番はちょっぴりだったのでちょっと残念でした。

 

ドキュメンタリー3作:

ダムネーション】:アメリカのダム文化の伝統と、最近一部に広がりつつあるという古いダムを撤去する運動を扱っていて、翻って日本では?といろいろ考えてしまいます。できれば鮭の遡上の話だけでなく、電力需要との兼ね合いの話などにも踏み込んでもらえると更によかったかなと思います。

白夜のタンゴ】:タンゴの発祥はフィンランドだ!という珍説?に反論すべくフィンランドを旅する3人のアルゼンチン人ミュージシャンのロードムービーです。でも確かにフィンランドでもタンゴは盛んなようでして、結局、楽しい文化交流になっていたのが素敵でした。

三里塚に生きる】:かつて三里塚闘争に関わり、今も三里塚で農業を続けている人々にインタビューをしています。かつての小川プロのドキュメンタリー映像なども使用しており、かつて成田空港建設時に国が地域住民にどのような横暴を働いたのかということを若い人にも知っておいて欲しいという制作者の方々の意気込みを感じます。と同時に、出演者の多くが60代であり、現在の日本の農業を担う中核の世代の方々であるということを強く意識しました。思えば、かつては国の屋台骨を支える産業とされていた農業が、高度成長期以降の国の方針によって衰退していった。この映画は、一貫しない農業政策の矛盾に苦しめられ続けながら黙々と土を耕し続ける狭間の世代の人々の姿を描いている部分もあるのかもしれないと思いました。

 

本稿の追加部分を書いている間に、高倉健さんに引き続き菅原文太さんも亡くなられてしまいました……。お歳がお歳だからという覚悟はどこかにはありましたが、出来ればあと1本でも2本でも最新作を拝見させて戴きたかった。謹んでご冥福をお祈り申し上げたいと思います。