たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2017/10/21版)

 

最近、こんな映画を見ました。

 

ドリーム
一挙に今年の個人的No.1候補の1本に。世界中に張り巡らされたグラスシーリング(見えない天井)があちこちで厚くなる一方の今日この頃、最終的にはそれぞれの現場で隣人を変心させるほど頑張るしかないという、世界を変える極意を見た気がした。

 

リングサイド・ストーリー
30半ばで売れない俳優の男は傍目には完全に悪質なヒモ。その彼女はたまたま就職したプロレス団体が意外なほどに水が合う。夢を持つことについての考察、そして結局がっつりラブ・ストーリー瑛太さんもいいけれど、佐藤江梨子さんの魅力と実力に改めて気づかされた。

 

エルネスト
チェ・ゲバラの配下でボリビア解放闘争を戦ったボリビア出身の日系人がいた。理想を求めて何が悪い、と今ここで主張したいのは阪本順治監督自身なのかもしれない。ゲバラが来日して広島の原爆資料館に行ったことがあるという史実に仰天した。

 

立ち去った女
海外では評価が高いというフィリピンのラヴ・ディアス監督の日本初公開作。不思議な美しさのあるモノクロの画面と独特の長回しに「フィリピンのタル・ベーラ」と呼んでみたくなる。3時間48分という上映時間でも監督の作品では最短レベルだとのことで、今後も興行に乗る可能性は限りなく低いかもしれない。

 

月と雷
角田光代さん原作で、様々な男性のもとを渡り歩いて生きてきた初老の女性とその息子に関わる若い女性が主人公。こんな特殊な役柄をしれっと演じられる高良健吾さんのみならず、私の持つバレリーナのイメージを根こそぎぶっ壊す草刈民代さんの圧倒的な女優力に震撼。この面子を相手に健闘している初音映莉子さんにも拍手を送りたい。

 

オン・ザ・ミルキー・ロード
エミール・クストリッツァ監督の久々の新作、ていうか内容的には約20年前の【アンダーグラウンド】の姉妹編みたいな感じ。欲望を満たすために戦い続け破壊し続けることしかできない人類はより愚かになっているかもしれない。だからこそこのラストシーンは、不覚にもちょっと泣いた。

 

50年後のボクたちは
ファティ・アキン監督の新作で、原作はドイツの大ベストセラーだとのこと。はみだしものの男の子が風変わりな転校生と盗んだ車で走り出す。しかし、日本では多分交通事情が違うので、未成年の無免許運転とか絶対やめて下さいね……。

 

プールサイドマン
栃木県大田原市で活動を続ける渡辺紘文・雄司兄弟の大田原愚豚舎の第3回作品。閑散として殺風景な田舎の一見退屈な日常の中、ラジオを通じて世界中から注ぎ込まれる悪意に、狂気の内圧が高まっていく。他で見たことのないソリッドな味わいのモノクロの画面に結構ハマってしまった。

 

パーフェクト・レボリューション
原作の熊篠慶彦さんは障害者の性の自立を目指すNPO法人の理事長で、彼を演じる主演のリリー・フランキーさんの友人なのだそう。恋人の女性の精神障害が画面から伝わってきにくかったのがちょっと残念だけど、ポジティブに生きることは人の生死に関わるほど重要だと訴えているところがいいと思った。

 

サーミの血
舞台は1930年代、かつてラップ人という蔑称で呼ばれていた北方のサーミ人の少女が、見世物的な立場にさせられるのが嫌で、傷つきながらも手探りで自分の道を探そうとする。スウェーデンのような国にも黒歴史ってあるんだな。日本も日本の黒歴史を直視する勇気を持たねばなるまい。

 

スティールパンの惑星
トリニダード・トバゴは宇宙一好きな楽器スティールパンの故郷。年1回開かれるコンテスト「パノラマ」の様子に、スティールパンの歴史を描いた再現ドラマなどを織り交ぜて描く。この音色に魅かれて世界中から人々が集まる。音楽立国って素敵やん。

 

エタニティ 永遠の花たちへ
ベトナム出身でフランス在住のトラン・アン・ユン監督が描く3世代に渡る上流階級の女性達の物語。夢のように美しく、そして少し退屈。けれど、こんな絵本の中のように理想的な世界を構築してみたかったと言うのなら、これはこれでいいのだと思う。

 

笑う故郷
ノーベル賞の受賞スピーチで賞をディスるほどの毒舌作家(なら貰わなきゃいいのに)が故郷の田舎町に帰郷して起こる悲喜こもごも。日本で公開されるアルゼンチン映画は濃厚な人間ドラマが楽しめる秀作が多いような気がする。

 

ユリゴコロ
【蛇とピアス】が出世作吉高由里子さんは、かなりヘビーな役柄でも割と厭わないところがあると思う。彼女と松山ケンイチさんの因業まみれのラブストーリーに較べて、松坂桃李さんの役柄があまり魅力的に映らなかったのが残念だった。

 

わたしたち
小さな秘密を暴露したり密告しあったりして学級内ヒエラルキーの頂点に取り入ろうとする子供達の友情あるある。サエない子を些細な方法で攻撃して結束力を高める(度を超すといじめになる)のも凄くリアル。子供の世界の逃げ場のなさを正確に描く描写力が凄い韓国映画

 

AMY SAID エイミーセッド
多くの個性派俳優を擁するマネージメント会社ディケイドが設立25周年を記念して製作した映画。正直個人的には、あまりにもあからさまなシネフィルのノリが気恥ずかしく、こういうタイプのファムファタル?には××が出そうになるが、会社一丸となってひとつの作品を作ろうとする姿勢は麗しいと思った。

 

望郷
湊かなえさん原作の連作集から抜粋した2本のオムニバス。故郷を懐かしむというより、昔憎んでしまった親が当時何を考えていたのかが分かるというシワい話だった。【ディアーディアー】の菊地健雄監督の、平凡で退屈になりかねない筋書きからでも手堅くドラマを構築できる手腕を買いたい。

 

 

アウトレイジ 最終章】はさすがにちょっとマンネリだったかな~。【あゝ、荒野】は、二部作ものとマザコン寺山修司が毛虫のように嫌いなので、多分見に行きません。マツジュンの不倫映画は……絶対行かねぇ!昔も今もベッキーちゃんが好きな私は、お前ら不倫が嫌いじゃなかったのかよ!ジャニーズならいいのかよ!お笑い芸人や落語家ならOKなのかよ!と日本(男性)社会のダブルスタンダード、トリプルスタンダードにムカツキを禁じえません……。(注:マツジュンをディスっているつもりはない。多分彼等は、自分で出演作を選べる立場にはいないと思う。)

分かってるよ、お前ら本当は不倫とかどうでもいいんだろ?順風満帆な人生を歩いているように見えたベッキーちゃんを、もっともらしい理由を付けて引きずり下ろせるのが楽しかっただけだろ?……ちなみに私は、不倫はいいことでも悪いことでもなく、配偶者に対して誠実じゃない一面があるのは事実でも、最終的には当事者同士で解決するしかない問題で、端からどうこう言えることではないと思っています。しかし、ベッキーちゃんは残念ながら男を見る目は無かったよね。ゲスの極みだっけ?クズの極みの間違いだろ。

 

……閑話休題。今、アメリカの映画界では、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ騒動が大変なことになっているようですね。これまで映画プロデューサーとして多くの有名作品を手掛けてきたワインスタインですが、1990年代頃、自国映画一辺倒だったアメリカ映画界において、海外からの秀作を多く輸入して一般公開したということに関して一定の功績があった人でした。ただし、「アメリカ人は2時間以上の映画は見ない」という頑迷な信念の持ち主であり、アメリカ向けと称して映画に多くの編集を加えさせたことから「シザーハンズ」(フィルムをチョキチョキ切ってしまうハサミ男、ジョニデさんの映画からの命名)と呼んで忌み嫌っていた人も少なからずいたという話を聞いたことがありました。まぁどちらにしろ、報道されているような事実があったのなら、映画界から追放されるのは当然のことでしょう。