たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近見た映画 (2018/10/01版):補足

 

上の記事↑に対する補足です。

 

原田眞人監督の新作【検察側の罪人】は、傑作になれる可能性があった映画ではないかと思います。でも、何もかもがよく出来ているこの映画にはただ1つ大きな欠点があり、それが総てを台無しにしていました。それは二宮和也さんの演技力です。

 

正直、木村拓哉さんの演技は予想以上に良かったです。
私はSMAPの一連の騒動ではネット上の噂をかなり真に受けていて、SMAP解散の直接的な原因は木村拓哉さんの判断ミスだったと考えており、自分の中での木村さんに対する評価はダダ下がりでした。が、本作での、苦悩に満ちた中年男性としての演技を認めない訳にはいかない。私はスクリーン上のパフォーマンスさえよければ、その人が他でどんな人であろうとある程度は許容できてしまうという癖がありますので(程度の問題は勿論ありますが)、木村さんが出ているという理由だけで作品を見もせずに拒絶したりすることは今後堅く慎まなければならないと決意しました。

 

これに対して、二宮さんの演技は、のっぺらぼうで、生きた人間の喜びや悲しみや苦悩、人間の存在の厚みや経験の奥行きのようなものを感じられないのです。

 

私は、かつて深夜放送で『Dの嵐!』や『Gの嵐!』などをやっていた頃から嵐が好きで(『Cの嵐!』は企画的にちと辛かった)、二宮さんがクリント・イーストウッド監督の【硫黄島からの手紙】に出演した時は本当に嬉しかったし、当時の二宮さんのナイーブな演技を見て何て才能に溢れた人だろうと心から思ったものでした。
しかしその後、【プラチナデータ】の頃からか、二宮さんの演技に少しずつ違和感を覚えるようになり、最近ついにその違和感が決定的なものになってしまいました。
最近の彼の演技を見ていると、眉根に皺を寄せてさえいればシリアスであり、あとはたまに怒鳴ったりしてメリハリを付けさえすればいいと考えているのではなかろうか、と思うことがあります。
個人的な観測ですが、彼の内面は良くも悪くも少年のままで、それ以降あまり成長していないのではないか、と思ったりします。
そして、彼が【母と暮せば】で日本アカデミー賞の男優賞をもらえたのは、少年に近い年代の役を演じたからではないかと考えます。仮に事務所が強力に後押ししていたのだとしても、箸にも棒にも掛からない演技ではいくら何でも最優秀賞まではもらえないでしょうから、この時の彼の演技にはそれなりの説得力があったのだと思います。が、それは、少年のナイーブさを演じるという彼のかつての得意技が役柄に合っていたからではないでしょうか。これに対し、最近の他の作品では、演技の傾向が、実年齢で求められる役柄とあまり合わなくなってきているのではないかと考えます。

 

ただ、人がどういう演技に感動するかというのは感覚的な問題なので、自分は二宮さんの演技が好きだと言う人がいらっしゃれば、その人の感覚を否定するつもりはありません。そして、これからも二宮さんを起用したい人がいて、二宮さんの演技を求める人達との間で需要と供給の関係が成り立てば、それでいいのだと思います。ただ私個人は今後、二宮さんが出演しているという要素を、作品を見たいと思う動機づけにすることはないだろうと思います。