たそがれシネマ

最近見た映画など。

最近映画館で見た映画 (2020/10/19版)

 

ここのところ映画館で見た映画です。

 

海辺の映画館―キネマの玉手箱
ここ何作かの大林宣彦監督は、一作一作に命を削って、若い人に言いたいことや映画に対する思いを作品に注ぎ込んでいたように思う。本作には特に監督の映画愛がぎゅうぎゅうに詰め込まれて、隅々にまで溢れかえっている。最後の最後まで映画のために命を燃やし続けて、私達に愛を残してくれた監督には感謝しかない。監督がまた会いましょうと言ってくれたから、またどこかで会える気がする。宇宙のどこかの次元できっとまたいつかお会いしましょう。

 

スパイの妻
【ハッピーアワー】【寝ても覚めても】を手掛けた濱口竜介・野原位両氏に、黒沢清監督が脚本執筆を依頼したとか。出来上がったのは、たとえ世界を滅ぼしてでも貫きたいと願う愛の話。いろんな解釈があるんだろうけど、私の考えでは、あれはあそこまでやらなきゃ成功しないくらい危険なことで、彼女はそれを理解したんだろう。蒼井優さんの口調や立ち居振る舞いを見ると、昔の映画もすごく研究してるだろうなと思う。高橋一生さん共々日本映画界の至宝だ。けれど個人的にはこのタイトルがイマイチ。内容的には間違ってないんだけど、「スパイ」という言葉にも「妻」という言葉にも全然ロマンを感じられなくてときめかないんだよね……。

 

TENET テネット
この筋書きが1回で理解できた人は凄い。私は本当に薄ぼんやりとしか分かりませんでした。まぁ何度も見てもらうことを前提にしているのかもしれませんが……。クリストファー・ノーランという人はこんなことばかり考えて生きているのでしょうか。真性の変態だと思います。

 


歌のイメージから何か話をこしらえるといった企画が好きではないので、本作も、瀬々敬久監督じゃなければ絶対スルーしてただろうな……。初恋同士の二人がそれぞれの道を歩み、紆余曲折を経て、十数年の後に結ばれる、といった話だが、エピソードの一つ一つが無理くさくなく、案外すんなりとストーリーに入って行けて、気がつけば登場人物たちの人生に思いを馳せていた。林民夫氏の脚本はさすがに強い。そして、菅田将暉さんや小松菜奈さんの輝かんばかりの存在感は、目が離せなくなるような吸引力があった。

 

ステップ
密かに好きな飯塚健監督作。妻に先立たれた男性が、男⼿⼀つで娘を育て、やがて再婚もする。育児を妻に任せきりにしていた人がそんなに簡単にいろいろできるようになるのかとか、仕事に制約がつくことにもっと葛藤は無かったのかとか、その辺りにもっと言及して欲しいような気もしたが、敢えてあっさり描いているのかもしれない。長年に渡る彼の心の変遷や家族との関わりが誠実に描かれているのは心地よい。こういう等身大の男性を演じる山田孝之さんをもっともっと見たいなぁと思う。

 

浅田家!
ユーモラスな家族写真を撮る写真家の浅田政志さんの話を中野量太監督が映画化。個人的に二宮さん主演の映画はもう見なくていいかなーと思っていたのに、妻夫木さんを二番手に持ってくるなんて汚い手を使うとは……(←妻夫木さんファン)。周りのキャストも演技力が抜群に高い人ばかりな中、二宮さんの演技もあまり疑問を感じたりすることなく見ることができた。ご結婚などをきっかけに演技にも変化が出てきたのならいいのだが。

 

一度も撃ってません
探偵物語』『あぶない刑事』【野獣死すべし】【いつかギラギラする日】などの丸山昇一氏脚本。主人公は団塊の世代のハードボイルド作家。周りは次々にリタイアしていく年回り。小説のネタのために殺し屋を名乗っているが、本当に依頼を受けたら外注している。そんな彼がトラブルに巻き込まれる……。う~ん、これはコメディなのか?ハードボイルドをこじらせたおじ(い)さんが右往左往する様子を愛でたり、寄る年波には勝てないという言い知れ得ない寂寞感を噛み締めたりすればよいのかな?これは登場人物の皆さんと同年代の人に向けた話という感じだが、さすがに自分はまだその域には行っていないかもしれない。

 

ミッドナイトスワン
内田英治監督の映画はブルドーザーみたいなイメージがある。ものすごくエネルギッシュ。だけど細かい感情の機微をなぎ倒していく感じ。本作も、せっかく草彅剛さんがトランスジェンダーの女性を丁寧に演じているのに、何故、後半ストーリーをああいう方向性に持って行ってしまうかな。母になりたいってそういうことじゃないのでは。旧来のステレオタイプジェンダーの鋳型に当てはめて考えることしかできないなら、こういう主題に安易に手を出したりしない方がいいんじゃないかと思う。

 

 

ご無沙汰しております。下の記事にもある通り、今後、映画館での映画鑑賞から自宅での映画視聴に軸足を切り替えようと考えるようになりました。自宅で見た映画の感想をどうまとめるか(もしくはまとめないか)は検討中です。