もっかのベスト5!(2012/12/29)
東京近辺で上映中の映画のうち、現在オススメするベスト5は以下の通りです。
1.【サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ】
(デジタル化の流れは避けられないとしても、そのせいで捨て去られるものが多過ぎるような気がする。)
2.【駆ける少年】
(ストリート・チルドレンの映画って大体胸が痛くなるけど、本作にはそれ以上の輝きがある。)
3.【砂漠でサーモン・フィッシング】
(ラッセ・ハルストレム監督×イギリス映画というのが案外意外な気がした。)
4.【ホビット 思いがけない冒険】
(ちょっとゴチャゴチャした印象が。でもこのテーマソングは好きだな。)
5.【最初の人間】
(カミュの故郷って仏領アルジェリアだったんだー、程度の知識しか無いんだよなー。)
今年の最後の1本にと選んで観た映画は【サイド・バイ・サイド…】でした。
本作は、プロデューサーでもあるキアヌ・リーブスさん(久々にお見かけしました ! )が、様々な映画人を相手に、フィルム映画とデジタル映画についての意見をインタビューしているドキュメンタリーです。インタビューの対象者には、ジョージ・ルーカス監督やジェームズ・キャメロン監督みたいなデジタル・エヴァンジェリストからクリストファー・ノーラン監督みたいなフィルム原理主義者、またヴィットリオ・ストラーロさんのような大御所の撮影監督を含むスタッフの人々や機材メーカーの人々まで、様々な人々が含まれています。
今、映画の世界では、ものすごいスピードでデジタル化が進行しています。
フィルムで映画を撮るのはそれだけでべらぼうにお金がかかるため、世の中の流れがデジタルに傾き、そのうちフィルムには骨董的な価値しかなくなってくるのだろうという大筋は仕方のないことでしょう。今のところはまだフィルムの画質の方が美しいとされていますが、ビデオの画質もそこそこ良くなってきていますし、CGや3Dの撮影、または編集などの昨今の技術は、圧倒的にデジタルとの相性の方がいいと思われます。また、一旦設備さえ整えば、現物の複製や運搬が必要なフィルムに比べてデジタルは配給のコストも圧倒的に安くなるし(設備投資の出来ない映画館は潰れても仕方ないというのは随分と乱暴な物言いですが、どのみち映画館はいろいろな理由で生成と淘汰を繰り返してきたので、そうした歴史の新たな1ページとされてしまうのかもしれません)、インターネットなどの他のメディアへの転換も簡単です。
しかし、フィルムとデジタルはそもそも別の特徴を持った別のメディアなので、それぞれの特徴を生かした素材や撮り方は自ずと異なります。その違いは一見微妙なものなのかもしれませんが、今後、デジタルでしかできない新しい表現が生まれてくる代わりに、これまでフィルム撮影で継承されてきた表現のある部分は葬り去られることになるかもしれません。また、誰でも手にすることの出来る敷居の低さは、間口が広がる可能性がある反面、粗製濫造が蔓延する懸念もあります。
まぁ大林宣彦監督などがおっしゃるように、新しい時代には新しい表現や新しい態度を身につけていけばいいのだろうから、そこは何とかなるのかもしれません。それより問題なのは、フィルムでしか残っていない映画を上映することが今後不可能になりかねなかったり、デジタルの技術が日進月歩であるが故に規格がコロコロ変わって少し前の映画でも見ることが出来ないなんてことになりかねないことです。これまで100年間続いてきたはずの映像文化は継続性を担保できるのでしょうか。大いに危惧されるところです。
デジタル化の波は総じて止めることができないとしても、もうフィルムは製造しませんとか、もう新作はフィルムでは配給しませんとか、そんなにいっぺんに何もかも変えることはないんじゃないかな。急速なデジタル化の煽りでうっかり置き去りにしてしまってはいけないものが多過ぎるんじゃなかろうかと、個人的には思います。
来年の映画界はどうなるんでしょうね-。映画に幸あれ。皆様、よいお年を。