最近見た映画 (2018/03/08版)
最近、こんな映画を見ました。
【シェイプ・オブ・ウォーター】
王子様はお姫様にキスされても化物のままでしたが、二人は幸せでしたとさ。オタクの鑑(かがみ)のギレルモ・デル・トロ監督がメインストリームのど真ん中で認められる日が来るなんて感慨深い。時代の風向きの何かの変化を象徴しているのだろうか。
【スリー・ビルボード】
娘を斬殺された母親が、町外れに警察を告発する3枚の看板を立てる。アップダウンの激しい展開の中で、本編の主役は誰で何がテーマだったのかが最後のシーンで分かるという斬新さ。後者は無理解と非寛容の自覚じゃないかな。
【ぼくの名前はズッキーニ】
養護施設を舞台にしたスイス発のクレイアニメ。特異なビジュアルもすぐに可愛く見えてくる。シビアな話題も包み隠さずバンバン出てくるけれど、子供達の健やかな成長を祈る愛とユーモアがあるから、見ていて悲しい気持ちにならないのが麗しい。
【さよならの朝に約束の花をかざろう】
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『LUPIN the Third 峰不二子という女』などの作品で脚本などを手掛けてきた岡田麿里さんの初監督作品。母親はどうやって母親になるのかということにここまで真正面から切り込んだアニメはかつて見たことがなかったような気がする。
【犬猿】
兄と弟、姉と妹の二組が織り成すきょうだい間の軋轢あるある。どーせ私はキツくて背の低い小太りな姉ですが、ここまで自分のコンプレックスをこじらせてないし、そのせいで他者を攻撃したことなんてないわよー !! と少々凹んだ。
【星くず兄弟の新たな伝説】
【星くず兄弟の伝説】の内容を全然覚えていなかったが、本作は前作以上にごった煮でアナーキーなのは間違いない。80年代サブカルや映画そのものへの限りない愛が詰め込まれていて、手塚眞監督っていい人だなぁ~としみじみ思った。
【ライオンは今夜死ぬ】
ヌーヴェルヴァーグの申し子ジャン=ピエール・レオ先生にご出演戴き、諏訪敦彦監督もシネフィル冥利につきるのではないか。子供達の使い方が上手くて思った以上に瑞々しい情感に溢れ、諏訪監督作品で最も好きな1本になった。
【嘘を愛する女】
「~な女」的なタイトルは古くさいからやめれ。その点を除けば想像以上にしっかりと描かれたラブストーリーで驚いた。完全癒し系の高橋一生さんと、謝ることができない意地っ張りな女性役の長澤まさみさんのコンボは無双じゃない?
【はじめてのおもてなし】
お母さんがボランティアで難民の人に住居を提供すると宣言したのをきっかけに、バラバラだった一家が絆を取り戻す物語。欧州での難民に対する逆風のニュースをよく聞く今日この頃、一方でこのような映画が作られる土壌もまだまだあるのだなと思う。
【ナチュラルウーマン】
本作の監督さんは、トランスジェンダーの女性の映画を作ろうとして相談していた相手に、そのまま主役を依頼したのだそうだ。そんな主人公の存在感が何てったって圧倒的。そして同姓婚の法制化ってやっぱり必要ねって心から思った。
【祈りの幕が下りる時】
『新参者』シリーズ最終作だけど、本作だけ見ても多分大丈夫。数々の名優さんを贅沢に配して現代の親子関係が様々な切り口で描かれる。シークレットの親子ふたりのあまりに迫真の演技に涙せざるを得なかった。
【サニー 32】
ピエール瀧さんとリリー・フランキーさんが女の子を監禁する映画なんて心底嫌だなーと思っていたら、その子が○○になるという全然予想外の展開で呆気にとられた。北原里英さんの演技力は発展途上の印象、でもそのガッツがあれば絶対大成できると思う!
【巫女っちゃけん。】
グ・スーヨン監督のごった煮的な作風が結構好きだけど、広瀬アリスさんを悩める巫女さんにしちゃうなんて目のつけどころがいいんじゃな~い?広瀬すずさんは掛け値なしの天才だと思うけど、アリスさんも味のある名優になれそうな予感がビシバシするんだよね。
【blank13】
斎藤工さんが「齊藤工」名義で監督した作品。派手な内容ではないけれど、演者がみんな一流なこともあり、きめ細かなニュアンスまで表現が行き届いているのが好ましかった。後半は佐藤二朗さんの独壇場になっているきらいはあるけれど……。
【サファリ】
とても容認しがたいような言い訳をいろいろと重ねながら、おのれの征服欲のためだけに、レジャーとしての狩猟(トロフィー・ハンティングと言うらしい)を臆面も無く続ける一群の人々が未だに存在するのだという事実に、ただただ吐き気が止まらない。
【苦い銭】
中国の人達は、どういう生活環境でどのように働きどういう実感を持って暮らしているのか。ワン・ビン(王兵)監督のドキュメンタリーはいつも、ニュースを見ているだけでは分かりにくい、中国で地道に生きる普通の人々の姿を垣間見せてくれる。
【ビガイルド 欲望のめざめ】
後半は「オマエの辞書には自業自得という言葉はないのか!」と終始イガイガしながら見ていた。ソフィア・コッポラ監督は女性の内面の葛藤を描くのが抜群に上手いので、女性だけの牙城の人間関係の話なんてそりゃあもう鬼のように嵌まる。
【マンハント】
こんなの日本じゃないじゃんという皆さんには、ケレン味こそが醍醐味のジョン・ウー先生に一体何を期待しているのだと言いたい。後半までちょっと人物配置が分かりにくかったのもご愛嬌。私は楽しかったので聞く耳は持たない。
【空海 KU-KAI 美しき王妃の謎】
夢枕獏さん原作の歴史サスペンスで、実在の人物の名前は借りているけれど、中国語題の【妖猫伝】の通りほぼ架空の化け猫の話。そりゃそうだ、中国の皆さんには空海って誰だか分かんないよね。違う路線を勝手に期待していたのは申し訳なかった。
【15時17分、パリ行き】
実在の事件を本人達が演じるという掟破り。そして中盤に観光のシーンが延々続くのが物議を醸す。クリント・イーストウッド監督としては、日常の生活の中にいる一般人がテロに立ち向かうところに感銘を受けたということらしいのだが、主役の3人中2人まで軍人さんじゃないですか……。
【嘘八百】
中井貴一さんと佐々木蔵之介さんのおじさん同士のバディぶりが可愛らしい。けど、いくらいい詐欺師が悪い詐欺師を騙すみたいな話でも詐欺は詐欺じゃん?基本、自分は嘘は苦手だということを再認識して終わった感もなくはない。
【羊の木】
町おこしのために仮釈放された殺人犯を受け入れる、というあり得ない設定に今一つ気持ちがついていかなかったかもしれない。それ以前に、錦戸亮さんは以前も公務員役が嵌まっていなかったのを思い出してしまったのだが……。
【殺人者の記憶法】
名優ソル・ギョングさんの迫力に乗せられてつい前のめりになってしまったけれど、そもそも認知症の描き方が正しくないような気がするし、お話をここまでこねくり回さなくちゃいけないのかなーという疑問も頭をよぎってしまった。
今回は他に【グレイテスト・ショーマン】 や【リバーズ・エッジ】その他の映画も拝見しました。【グレイテスト・ショーマン】は、ミュージカルシーンは素晴らしいのですが、ストーリー的に食い足りないと感じてしまいました。【リバーズ・エッジ】は、あの原作を読んだ時の衝撃には到底敵わないというか、あの時代の底に貼り付いていたほの暗さは今の時代には再現不可能なものだし、それを今敢えて映像化することの意味を感じ取れませんでした。けれど、これらは歳の行ったおばさんの感想なので、先入観のない若い人が見たら違った意見になるのかもしれません。
あと、年末に見逃していた【バーフバリ 王の凱旋】を年明けに見に行きました!(【バーフバリ 伝説誕生】も予習して行きました。これは去年内に公開されたので当サイトでは去年の映画としてカウントしたいと思います。)正直、復讐というテーマがあまり得意ではないので、娯楽映画として力いっぱい楽しむのは個人的には難しかったかもしれないです。が、【ムトゥ 踊るマハラジャ】から20年余、インド娯楽映画のヒット作が定期的に出てくるサイクルができ上がりつつあるのは喜ばしい限りだなぁと思いました。関係者の皆様には、これからもこの鉱脈を末長く地道に掘り進め続けて戴けると嬉しいです。
今度こそはもっと短いスパンで更新できるように頑張りたいと思います。ではまた次回。